兵庫県丹波市に硬式野球にかける高校女子球児が全国各地から集まる「全国高等学校女子硬式野球選手権大会」が、明日26日から同市市島町中竹田の「つかさグループいちじま球場」と、同市春日町下三井庄の春日総合運動公園野球場で開かれる。23回目を数える今回、北海道から鹿児島県まで過去最多の32チームが参加。8月2日まで熱戦を繰り広げる。地元の一大イベントに成長した同大会を支える数多い関係者のなか、試合のアナウンスを受け持っている女性たちを紹介する。
◆30代から50代9人
同市の社会人チームなどでつくる「丹波軟式野球協会」のアナウンス部が、同大会のアナウンスを引き受けている。
部長の近藤紀子さんをはじめ、兼古博世さん、光田栄子さん、松本有崇佳さん、石原華香さん、大森なつよさん、大野紗月さんらのほかに、甲子園球場で阪神タイガースの一軍の試合をアナウンスしていた同市山南町出身の村山くみ子さん(同県西宮市)もメンバーに加わっており、30歳代から50歳代の総勢9人。
アナウンス部は、2011年に7人で発足。社会人野球や少年野球の大会などでアナウンスをしており、一昨年から高校女子硬式野球大会も引き受けている。
◆アクセントに苦労
村山さんを除いて、アナウンス経験のなかった人たちばかりで、村山さんを講師に研修を積んだ。とりわけ苦労したのは、アクセント。「○○中学校」との発音では、丹波弁だと語尾が下がるが、上がるのが正解。「背番号1」も語尾を下げず、上げる。
「よく使う言葉のアクセントについて村山さんに書いていただいた紙を放送席に置き、試合のアナウンスをしながら時折、その紙を見てチェックしています」と近藤さん。迷ったときは試合中でも村山さんに連絡し、問い合わせることがある。
また、メンバーたちは村山さんの発声をイメージしながらアナウンスをするよう心がけているという。「阪神甲子園球場でアナウンスをされていたプロが、出身者におられるのは心強い限り」とメンバーたちは口をそろえる。
◆忘れられない失敗
一日に最多で5試合のアナウンスをすることもある。細心の注意を払ってはいるものの、ミスをすることも少なくない。
長男が少年野球チームに入ったのがきっかけで、野球にかかわり始め、スコアをつけられるようになり、全国高校野球をテレビ観戦しながらスコアをつけることもあるというメンバーに、「忘れられない思い出がある」という。
初めて高校女子硬式野球大会のアナウンスをしたとき。守備位置についた選手を紹介する際、間違って相手チームの選手の名前を呼んだ。
「選手やスタンドの視線が私に向けられているように感じました。『失礼しました』とお詫びをし、言い直しましたが、初めての試合で緊張していたのだと思います」と苦笑い。
ほかのメンバーにも多かれ少なかれミスした場面や、あわてふためいた場面がある。
アナウンスをしながら、次の試合に向けての準備をし、選手の名前などをチェックしていると、ゲームの展開が大きく変わり、あわてた―。ゲームについついはまりこんでしまい、アナウンスをするタイミングをはずした―。球審から一度に多数の選手交代を口頭で伝えられ、頭が混乱した―。女子野球では選手を「さん」づけでアナウンスするのに、社会人野球などと同様に「くん」づけで言ってしまった―。
◆重荷と共にやりがい
「ライト」と「レフト」を間違えた―。「ファールボール」を「ファールボーイ」と言ってしまった―など、メンバーにはそれぞれ数々の思い出があるが、「大会を支えているという実感を持てるのがうれしい」と近藤さん。「アナウンスがまずいと、進行の妨げになる。アナウンスの良し悪しも試合を左右すると思います」
目立たず、それでいて試合を盛り上げる。「そういう裏方としての重荷がありますが、やりがいでもあります」と話す。
◆選手の必死さに感動
明日26日から始まる全国高校女子硬式野球大会。メンバーたちは「選手のレベルはものすごく高く、スピードもあるしパワーもある。グラウンドからも応援席からも熱を感じます」と感心。「選手の必死さに感動をもらえます。丹波市を高校女子硬式野球の聖地と思ってくれているのもうれしい」という。
聖地で繰り広げられる“感動の舞台”の陰には、アナウンス部の女性たちの奮闘もある。