履正社・清水君、抱き合った記録員 奥川投手は「奥川さん」 ”素顔”見た記者つづる

2019.08.27
ニュース丹波市丹波篠山市地域

優勝メダルを記録員の生徒の首にかけ、抱き合う清水君(左)=兵庫県西宮市の甲子園球場で

22日まで兵庫県西宮市の甲子園球場で行われた「第101回全国高校野球選手権大会」。頂点に立った履正社(大阪)のエースで、同県丹波市出身の清水大成君(3年)を追った地元紙記者が、舞台の裏側をつづった。

 

 

決勝の大舞台でアウトを取り、指を「1」に掲げる清水君

午前3時半起床「人生で一番早起きです」

夏の甲子園大会閉会式終了後、球場のインタビュールーム。取り囲む記者に「涙がありませんね」と水を向けられた清水君は、「まだ、実感がありません。まあ、部屋に戻ってから泣くってこともないんですけど」と笑わせた。

その日の試合に関するやり取りがあった後、軽く雑談し、場を和ませるのが清水君だった。星稜の奥川恭伸投手の事を、「奥川さん」と、同級生ながら敬称で呼ぶ理由を聞かれた時も、「奥川さんくらいになると、『奥川さん』でしょう」と笑いを誘った。

初戦が午前8時からの第1試合だったので、以後、起床時刻を聞くのが定番化した。1-3回戦は午前3時半に起きていた。「これまでの人生で一番早起きですよ」「慣れません」とぼやくことしきり。抽選の結果、準々決勝で初めて第4試合になり「これで3時半起きから解放される」と喜んだ。

「汗っかきだから比較的涼しい朝の方がいいのでは」とたずねると「暑いのも好きじゃないですが、3時半起きよりは(暑い方が)いいです」と返ってきた。言葉通り、関東第一戦では、自身が「大会のベストピッチ」という好投で完投してみせた。

 

閉会式で履正社主砲の井上君に帽子をかぶせる清水君

「あいつを日本一の記録員に」

投手は過酷だ。甲子園の大舞台となると尚更。インタビュールームで見ていても、日を追うごとに疲れがたまっている様子は見てとれたし、決勝戦終了後のインタビューでは全力を出しきった疲れからか、立っているのがつらいという感じで屈伸を繰り返していた。

閉会式終了後、グラウンドで喜び合う選手たちに混じって1人、制服姿の学生がいた。清水君は自身が胸に提げていたメダルを外し、その生徒にかけ、抱き合った。彼は履正社の記録員だった。

「あいつを日本一の記録員にしようとみんなで言っていたんです」。清水君は、毎試合後のインタビューで、打撃で点を取ってくれる野手と共に「分析してくれて助かっている」と、彼への感謝の言葉を欠かすことがなかった。

夏の甲子園最後のインタビュー時間の終わりを告げるアナウンスが部屋に響いた。最後に、「清水君、続きは〇〇で」と、彼が好きだという地元の焼肉店の名前を大声で言った。清水君は、笑っていた。いつものように。

関連記事