平成の「記憶」令和に開封 神社に奉納の”タイムカプセル” 住民つづった色紙続々と

2019.10.18
ニュース丹波市

昭和から平成に時代が変わる時期の住民が綴った色紙をながめる神社や自治会の関係者たち=2019年10月13日午前10時42分、兵庫県丹波市春日町下三井庄で

平成の思い、令和に披露―。兵庫県丹波市春日町下三井庄の一宮神社でこのほど、昭和から平成に変わる1989年1月に本殿に奉納された、当時の住民が思いを綴った色紙が初展示された。いつ開けるとも決めず色紙を収めた木箱をタイムカプセルのようにまつってきたが、令和に元号が変わったのを機に開封した。集まった人たちは、家族の名前や、集落の開発の歴史、先の戦争を踏まえた平和への願いなどがしたためられた色紙を興味深そうにながめていた。

 

 

 

改元直後、「昭和64年」の色紙も

昭和64年と平成元年の元号が記載された色紙

住民や出身者が寄せた131枚の色紙を、組ごとに並べた。家族の名前を書いた人、先の戦争を振り返り、平和への願いをつづった人、大災害をもたらした昭和58年の台風10号関連、昭和61年に改修が完了した「古路地池」など昭和の大きな出来事の記録もあった。

集落の当時の事情を忠実に後世に伝え、21世紀を生きる人へのプレゼントにしようと、88年秋から自治会全体(123戸)で取り組み、89年1月16日に奉納した。昭和天皇の崩御で1月8日から新元号に変わったため、色紙は「昭和64年」と「平成元年」が混在する。

色紙1枚に5人家族が1人1句ずつ詠んだ川柳を寄せ書きして奉納した岡田康雄さん(77)は、「全く覚えていなかった」と頭をかく。「あの時代、色紙を書く経験なんてほとんどの人が初めてだったはず」と当時に思いを馳せた。

色紙展示を発案した宮総代の上畑嘉晴さん(72)は、「老人会から一度見たいとリクエストがあった。戸主は半分以上亡くなっているよう。なつかしい名前がある」と感慨深げだった。

色紙は元の木箱に収め、再度奉納する。あわせて令和元年にも、今の時代を生きる住民の思いを次代に引き継いでいく類似企画を考えるという。

当時、この企画の中心人物だった故・岡田好一さんの色紙には、墨痕鮮やかに「下三井庄の人々は氏神様を崇拝し、土地への愛着を持っています」と書かれていた。

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