立冬を過ぎ、鍋が恋しくなる季節を迎えるなか、兵庫県丹波市青垣町の農業会社で16日、米の無農薬栽培に活躍したアイガモを食肉に精肉するための出荷作業が始まった。人間が近づくと逃げる、1羽が動き出すとそれに従う習性を利用し、屋外の飼育場から社員が巧みにアイガモの群れを育苗用ハウスの片隅に追い込んだ。「ガーガー」と勢い良く鳴き、羽根をばたつかせるアイガモを、社員はひょいひょいと首をつかんで箱詰めし、近くの精肉業者へと生きたまま出荷した。
長年、合鴨農法に取り組む「まるきん農林」は、今年6月にひな300羽を90アールのほ場に放鳥。虫や雑草をエサに、排泄物は肥料にと、農作業を助けつつ成長したアイガモを出穂前の8月1日に田んぼから引き上げた。
「お役御免」となった後も3カ月余り麦や米、野菜くずなどを与え、肉付きが良くなった頃合いを見て出荷となった。
同社の堀謙吾社長(52)は「水から上げた時点で精肉するところもあるが、うちは脂がのるまで飼っている。命を頂く以上おいしく食べてあげたい」と言い、「毎日えさやりがあり、休みがなかったので、やっと解放されたという思いもある」と話していた。