「子育てハッピーアドバイス」などの著者で、真生会富山病院心療内科部長の明橋大二さんが、このほど兵庫県丹波市で講演した。明橋さんは「子育てで一番大切なのは自己肯定感を育てること」と繰り返し、そのためにどうすればいいのかを具体的に伝えた。要旨は次のとおり。
今の子どもたちの心配な症状や行動の根っこは、「自己肯定感の極端な低さ」にある。自分は生きている価値がある、大切な存在なんだという感覚が持てなくなっている子が多い。諸外国と比較しても、日本の子どもの自己肯定感が低いという調査結果が出ている。
自己肯定感は、0―3歳に育つ。その上で初めて可能になるのがしつけや勉強だ。思いやりを持てるのも自己肯定感があってこそ。最も大切なのは、心の土台となる自己肯定感を育てることだ。3歳を過ぎていても自己肯定感は育てられる。
自己肯定感が低くなる要因に、虐待、いじめ、親との関係の希薄化がある。増え続ける虐待を防ぐため、来年4月から家庭での体罰が全面禁止される。いじめも何とか防がなければならない。また、手のかからない「いい子」は、自分の悪いところを出して受け止めてもらった経験がなく、自己肯定感が育っていないことがある。手のかからないいい子になりやすい、人一倍敏感な「HSC」という子どもたちがいることも知っておいてほしい。
子どもの心は、依存と自立、甘えと反抗を行ったり来たりして成長する。甘えたいときに十分甘えて安心感をもらった人が自立する。問題なのは依存させない関わり(ネグレクト、放任、無関心)と、自立させない関わり(抑圧・否定、過干渉)。平たく言うと、ほったらかしと構い過ぎに気を付けようということだ。
「甘え」には、いい甘えと悪い甘えがある。2つの違いを知ることは大切だ。「甘えさせる」は、情緒的な要求に応えること。「甘やかす」は、物質的な要求に対して、言うがままに与えること。また、子どもがどうしてもできないことを手助けするのが「甘えさせる」。自分でできることまで親がやってしまうのが「甘やかす」だ。
思春期の反抗は、安心感をもらったから出てきたのであり、それまでの子育てが間違っていなかったということだ。反抗しだしたらひと安心、子どもの心が自立に向かってきた証拠だ。
子どもが小さい頃は抱っこなどのスキンシップを。それから、子どもの話をしっかり聞いてやり、子どもの気持ちを汲んだ言葉をかけていくこと。
子どもをほめることも大切。叩かないしつけの王道だ。ポイントは3つ。できないところよりできているところに注目する。「できて当たり前」ではなく、「できなくて当たり前」と考える。比較するならよその子とではなく、以前のその子と比べることだ。
子どものがんばりを認めてねぎらい、「がんばれ」より「がんばってるね」と言おう。自己肯定感を育むために一番有効な言葉は「ありがとう」。お礼の言葉であると同時に、相手の存在価値を高める言葉でもある。
また、困難を抱えた親の支援は、親自身の自己肯定感を育むことに尽きる。「困った子どもは困っている子ども、困った親は困っている親」。子どもが宝であるのなら、現場で育てている親もまた宝のはずだ。