治療薬なし「新型コロナ」にかかったら? 「悪化抑え回復助ける」 感染症専門医に聞く「病院で提供可能な医療」

2020.02.20
ニュース丹波市丹波篠山市地域

過剰に怖がらず、冷静に行動をと呼びかける感染症専門医の見坂センター長=2020年2月17日午後8時6分、兵庫県丹波市氷上町石生で

新型コロナウイルスの感染が拡大している。日本感染症学会の専門医、指導医の見坂恒明・兵庫県立丹波医療センター地域医療教育センター長(45)=神戸大特命教授=に、り患したとき、同病院で受けられる医療内容を聞いた。2009年の新型インフルエンザ発生時に公立豊岡病院(同県豊岡市)で「新型感染症」の治療経験がある見坂さんは、「今分かっている範囲では、高齢者や基礎疾患がある人以外にとってそう怖くはない。かかっても、大部分の人は重症化せず、そのうちに治っているので、過剰に心配する必要はないだろう」と見ている。

 

入院治療「本人の力で治るを手助け」

 ―どの程度「こわい」と受け止めているのか。
致死率が1―2%。季節性のインフルエンザの0・1%と比べると高いが、新しいインフルエンザが流行すると1―2%亡くなっているので、新しいインフルエンザぐらいの怖さかなと思っている。人にうつす力も、インフルエンザと同じ2人くらいだ。

―二種感染症指定医療機関の丹波医療センターでは何をしてもらえるのか。
まず、患者なのか、患者じゃないのか、診断をする。丹波健康福祉事務所立ち合いの元、検査し、検査機関に鑑定に出し、6時間後くらいに結果が出る。治療薬がまだないので、根本的な治療はしようがなく、患者さん自身が治る手助けをしていく。それは丹波医療センターだけでなく、より高度な医療機関であっても同じ。

―具体的に、見坂さんが患者を診察することを想定して聞きたい。軽症の場合はどんな治療を。
感染していることを伝えるが、病院で提供する医療は特にない。人にうつさないようにしてもらわなければいけないので、自宅で、家族と離れた部屋で安静にして過ごすよう促す。時期が来れば風邪が治るように、そのうちに治る。タミフル、リレンザの抗インフルエンザ薬がなかった2000年以前のインフルエンザ治療と同じ。治るのをじっと待ってもらう。

―中等症の場合は。
他の患者にうつさないよう、特別な病室で入院してもらう。肺炎を起こしていたら、酸素を吸ってもらい、細菌感染を合併しているかもしれないので、コロナウイルスには効かないけれど、抗生物質を投与する。血圧が下がっている場合は、血圧を上げる薬を投与する。本人が治る力を発揮できるよう、悪くなるのを遅らせ、回復が早まるよう手助けをする。時期が来て治るのを待つのは、軽症と同じだ。

―重症の場合は。
中等症の治療に加え、呼吸が悪くなると、人工呼吸器を使う。B型肝炎の薬や、HIVの薬を投与した患者さんが回復した、との報告があり、「使うのが妥当ではないか」と考える医師も多い。私も使うことを考える。ただ、これらの薬が効いて回復したのか、本人が自力で回復するタイミングと薬の投与が重なっただけなのか、因果関係はまだ分かっていない。重症であっても、本人が治る力を発揮し、時期が来て治るのを待つのは同じ。高齢者や基礎疾患がある人が重症化しやすいのは、治る力が、若い人や健康な人よりも落ちているからだ。

―私たちにできることは、手洗いや人混みに極力行かないように気をつける、免疫が落ちないように栄養をとってしっかり眠る、といったことか。
そうだ。基本は、インフルエンザの予防と同じ。コロナには、アルコール消毒が有効なので手指の消毒に使ってほしい。飛沫感染するので、電車に乗ったり、人と近づくときはマスクをしてほしいが、品薄で入手しづらいのが悩ましい。調子が悪いな、と思った人は、早目に会社や学校を休むことも大切だ。

―豊岡市で新型インフルエンザの診察に当たった経験から、今回の流行をどんなふうに見ている。
新型インフルエンザは、国内2例目からいくつかの確定診断が公立豊岡病院でついた。多い日で1日に50人くらい発熱外来の受診があり、大変だった。半分くらいの人が感染していた日もあった。数日で変わったが、当初は、感染と診断がついた人は軽症でも全例入院させていた。今振り返ると、過剰に怖がっていた。豊岡でも重症例はほぼなく、みなさん回復し、退院された。

―メッセージを。
コロナウイルス感染を疑って受診するときは、受診前に健康福祉事務所に連絡を。事務所から連絡を受け、感染防止対策を整え診察する。飛び込みで救急外来を受診されると、感染していれば誰かにうつすかもしれないし、感染していなければ他の人からもらうかもしれない。必ず電話をして、事務所の指示を受けてほしい。大阪で入った飲食店で、近くで中国人が食事をとっていたという理由で、「調子が悪く感染が心配」と受診された患者さんがあった。ひどく心配すると、不安で因果関係を作ってしまいがち。冷静に行動を。

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