住民修復の「住之江の庭」 県有形文化財に指定 庭園研究の権威、重森三玲の作

2020.02.25
ニュース地域歴史観光

県有形文化財に指定された住之江の庭=兵庫県丹波篠山市川原で

兵庫県教育委員会は20日、新たに県有形文化財に9件を指定し、同県丹波篠山市では、福住地区川原にある住吉神社の庭園「住之江の庭」が指定された。「名勝」部門での県指定は市内で初めて。

 広さ482平方メートルの庭園は、作庭家で日本庭園研究の権威、重森三玲氏が昭和41年(1966)に作庭。同神社が大阪・住吉大社の分霊であり、同大社が海神をまつるため、大阪・住之江の海浜を主眼としていることからこの名がついた。北側にある主庭は枯山水で、白砂の中に組まれた石組が岩島や船石を、3本の太い白線が海の荒波を、砂紋が小波を表現している。
 また、重森氏がテーマとした「古庭園からの脱却と永遠のモダン」を表現しており、県教委は、「本県における芸術上の価値および学術上の価値は高く、名勝に指定し、保護を図る」とした。
 市教育委員会によると、地元の造り酒屋の主人が「福住に名勝を」と地域に呼びかけ、資金を集めて重森氏に作庭を依頼。当初は拝観料を取るなど、地域をあげた観光拠点としてにぎわったという。
 近年、経年劣化によって魅力が損なわれていたが、地域住民などから、「再び、地域の観光資源として活用を」との声が上がり、文化庁の補助を受けて2017年度から修復事業を開始。作業には地元住民らを中心に延べ約400人が参加し、3年かけて往時の姿を取り戻した。
 市教委は、「地域にとっても、自分たちで汗をかいたからこその指定。これから住之江の庭を活用した地域の活性化と魅力発信に追い風になる」と期待している。

関連記事