新型コロナウイルス感染者が兵庫県内では日々増えており、丹波圏域(丹波市、丹波篠山市)の2類感染症指定医療機関の県立丹波医療センター(丹波市氷上町石生)は、県内都市部の感染者を受け入れ、県民に貢献している。同病院は、患者増に備え、感染症病床(4床)と同じフロアの一般病床(5床)を空け、県からの受け入れ要請に備えている。
県内の感染症指定病床は54床。県内は、神戸、阪神、東播磨、北播磨、播磨姫路、但馬、丹波、淡路の8医療圏に分かれており、自圏域で生じた患者を自圏域の感染症指定医療機関で受け入れるのが基本。しかし、神戸、阪神、播磨姫路圏域で感染症病床数を上回る患者が発生したため、丹波を含め県全体で、県内発生の感染者を受け入れている。
細菌が病室の外に出ないよう気圧を低くした隔離専用室の感染症病床が足りなくなったため、県は、一定の感染症予防策を講じた一般病床を感染症患者入院用に確保するよう協力を求めている。
同センターは、5床を用意するために、別の病気で同じ病棟に入院していた患者を他の病棟に移し、新型コロナ感染者を1つの病棟に集めた。
同センターの秋田穂束院長は「スタッフは、細心の注意を払って新型コロナウイルスの入院患者のケアと院内感染予防に努めている。感染者とその他の患者さんは完全に隔離して治療をしているので、安心して入院、受診を」と話している。
県丹波健康福祉事務所(丹波保健所)によると、県は依然、感染者は全員医療機関に入院させる措置をとっており、東京都のようなホテルでの隔離はしていない。
丹波地域で新たに感染者が確認された場合、同保健所が、丹波医療センターに患者の受け入れを依頼する。空きベッドがあれば同センターで入院ができ、満床で受け入れができない場合は、県庁医務課の「入院コーディネートセンター」が症状に応じた受け入れ先を探す手順。
人工肺、使うとなると「最終手段」
新型コロナウイルスの重症患者の治療機器として注目を集める体外式膜型人工肺「ECMO(エクモ)」が、丹波医療センターに2台備わっている。重症の心不全の治療に役立てているが、重症肺炎の治療目的で使ったことはない。同病院は「他に救命方法がないときの最終手段。そこまでの重症例の治療が生じないことを祈る」と話している。同装置のコロナ肺炎患者への導入は、同病院単独でなく、日本集中医療学会の会員らでつくるネットワークと協議して決める。
患者の静脈血を抜き、体外の人工肺で酸素を含ませると共に二酸化炭素を除去した血液を再度、患者の静脈に戻すことで、自発呼吸ができない患者の体外で、装置によって呼吸をしている状態をつくる。
肺に負担がかからないようにすることで、肺炎が収まり、本人の免疫力で回復する時間稼ぎができるのが利点。
しかし、対症療法であり、急変や不具合が生じると、たちまち致命的な状況に陥る。常に監視が必要で、呼吸器内科医や集中治療医、看護師、臨床工学技士らがそれぞれ複数、防護服ら感染症対策を講じた上で24時間付きっきりになる。回復までの期間が読めず、長期化するとスタッフが疲弊し、脱落しかねない。
同病院は、「ECMOがあるから大丈夫、と大手を振って言えるような医療機関は県内でも数病院しかない。他の疾患の重症例を診ず、コロナ肺炎のみに集中することは当院ではできない。割ける人員を考えると、稼働させられるのは1台だろう」と話している。