減る部活、今後どうする? 学校「超過勤務」「適正数に」 保護者「子どもの夢」 悩む人口減の地方

2020.04.15
ニュース丹波篠山市地域

部活の今後のあり方について議論された総合教育会議=兵庫県丹波篠山市北新町で

 部員数の減少などにより、維持が難しくなってきている兵庫県丹波篠山市内の中学校の部活動を巡り、今後のあり方について市や市教育委員会などが議論を始めた。根本にあるのは「少子化」とそれに伴う教員の減少。顧問を務める教員の超過勤務により、現場からは適正な部活数にするよう、市全体で統一した規定を求める声が上がる。一方で、生徒たちがやりたい部活を存続してほしいと願う保護者や地域の声もあるため、酒井隆明市長は、「常設型の合同チーム」の設置が可能かどうかなども検討するとしている。人口4万人弱のまちで起きている事態に関係者は、「このまちだけでなく、全国的の地方ならばどこでも起きている問題」と話す。

合同チームは一時的な救済措置

 市内5校のうち、最多で17種の部活がある学校がある一方で、最も部活数が少ない学校は6種のみ。この学校では、体育系は男子なら野球か卓球、バレーボール、女子はソフトテニスかバレーボールのみとなる。

さらに昨夏の3年生引退後、1、2年生だけでは大会に出場するための人数が集まらず、他校と「合同チーム」を結成している部活が4つある。

ただ、基本的に県中学校体育連盟(中体連)の規定では合同チームはあくまでその年度に限ったもので、部員数が足りないチームに大会出場の機会をつくる一時的な救済措置。常時、合同チームを置くことは認められていない。市内では陸上ホッケー部が合同チームを常設しているが、中体連の登録競技ではない。

このような状況を受け、酒井市長は教育長や教育委員を交えた教育総合会議をこれまで2度にわたって開き、▽少子化により、集団スポーツのチーム編成ができない▽部活の種類の減少▽学校の小規模化による顧問・指導者の不足―を課題として挙げ、地域も交えて今後の部活のあり方の検討作業に入っている。

少人数でも好成績 保護者ら「存続を」

 議論の発端となったのは市内のある中学校のソフトボール部。「年度当初に1、2年生の部員の合計が大会出場人数に達しない状態が2年続いた場合は廃部」という同校の規定に該当しており、19年度は特例的に維持したが、新年度は部員募集を行わず、21年度に廃部することが決まっていた。

しかし、▽少人数ながら昨夏、県大会ベスト4など優秀な成績を収めた▽4月に入学する新1年生には全国レベルで活躍した生徒もいる▽年度当初に3年生もカウントし、1年生が1人でも入部すれば少なくとも今夏の大会には出場できる―ことから、保護者らが学校や市教委に存続を要望。署名活動も行い、今年2月には3000筆を超える署名を酒井市長らに提出した。

その後、同校の学校運営協議会で再検討した結果、再び特例での存続を決定した。ただ、新年度は部員募集を行うものの、部員数は今後も減少するため、2年後には廃部することも決めた。

学校のイメージ「ブラック企業」

 学校現場が規定を順守するのは、地方の小規模校では、生徒数の減少に伴って、職員数も減少している実情がある。

このほど開かれた総合教育会議に出席したある校長は、教員の超過勤務が常態化していることから、「学校は『ブラック企業』というイメージがあり、教師離れが加速している」とし、「教員は部活動を終えた時点で超過勤務になっており、そこから翌日の授業の準備などが始まる。生徒指導があればさらに時間がかかる」と現状を訴えた。

また、中央教育審議会(中教審)が超過勤務の上限を月45時間と答申しているが、部活があることで必然的に非常に厳しいハードルになっており、「働き方改革への対応に戸惑っている。各校とも、悩み苦しんでいる」「部活に熱心に取り組むことが当たり前だったが、この”ボランティア”が社会の常識として定着していることが問題」とも述べた。

そこで、校長会で意見をまとめ、1つの部活に対して2人以上の複数顧問制を徹底し、交代で指導ができる体制をとることで、勤務時間の適正化を図ることを提案。これに伴い、複数の顧問を置くことができる部活数が「適正数」とした。これまで10人の教員で10の部活を見ていたものを、1つの部活に対して2人を置いた場合、適正数は「5」になる。

そのうえで、生徒の減少に応じた部活数の実現のため市全体で協議することや、行政への理解と協力を求めた。

文科省の調査によると、公立中学校教員の1週間の残業時間は平均で23時間20分。うち7時間43分を部活動に費やしているというデータもある。

また、スポーツ庁は18年3月にガイドラインを策定し、休養日などを設定。活動時間は減少傾向にあるが、いまだ改革は道半ばだ。

会議では、市教委が専門的な知識を有する地域住民を「部活動指導員」として配置していることを受け、委員から、「教員と支援員の2人では複数顧問にならないのか」という投げ掛けがあったが、現場は、「事故やけがなどが起きた場合に責任を取るためには、教員がいなくてはならない。技術的な指導はしていただいているが、全てをお任せすることはできず、結局、教員を置くことになる」とした。

「持続可能な部活の姿を」

 酒井市長は、「非常に厳しい現場の声を聞いた。状況を把握できていなかったことを申し訳なく思う」とし、「ただ、部活は子どもたちにとって非常に大切なもの。どうやってニーズに合った部活をつくるか、検討を進めたい。市として、地域と共に支援し、持続可能な部活の姿をつくっていければ」とした。

今後、県や中体連に危機感を訴え、常設型チームの設置を求めるという。また、学校内だけでなく、生徒たちのスポーツ環境を整備する方法がないかも考えていく。

ソフトボール部のある保護者は、「要望を聞き入れてくださりありがたい。子どもたちも地域の人のおかげで存続できたことを意識しているので、頑張ってくれると思う」と言い、「先生の大変さも聞いており、申し訳なく思うところもある。一方で、子どもたちの夢をかなえてやりたいとも思う。ソフトボールだけでなく、全ての部活の問題。議論が進んでいけば」と話した。常設型の合同チームの検討については、「あればいいなと思う」とした。

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