世界最小の卵化石を発見 「丹波竜」発掘の篠山層群 前期白亜紀の地層から新種2種

2020.06.29
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ヒメウーリサス・ムラカミイ。写真右は、卵の輪郭(白線)と卵殻(黒)を示したもの(筑波大学・人と自然の博物館提供)

兵庫県立人と自然の博物館と筑波大学は23日、約1億1000万年前(前期白亜紀)の地層「篠山層群大山下層」(同県丹波市山南町上滝)から、非鳥類型では世界最小となる恐竜の卵の化石を発見したと発表した。この化石を含め2種類を新種と判定。また世界最小の卵化石の学名を、2006年の草食恐竜「丹波竜」化石発見者の一人で、今回の化石群の発見や調査に大きく貢献した村上茂さん(75)=同市=にちなみ、「ヒメウーリサス(可愛らしい卵の化石)・ムラカミイ」と命名した。

ヒメウーリサス―を産卵したと推定される親恐竜の復元図(復元図提供:長手彩夏さん)

2019年1―3月に同地層で行われた大規模発掘調査で、丹波竜などが見つかった地層よりも6―7メートル上位から約1300点の卵・卵殻化石を収集。その中に、ティラノサウルスやアロサウルスなどで知られる獣脚類恐竜の卵殻が4種類含まれていることが分かった。そのうちの1種類が新卵属・新卵種の「ヒメウーリサス・ムラカミイ」で、別のもう1種類の新卵種は「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス」(繊細な卵の化石・模式標本が発見された兵庫県に由来)と命名した。

「ヒメウーリサス―」の大きさは長さ4・5センチ、幅2センチ、重さは推定約10グラム。非常に細長い形状であることや、卵殻の微細構造の特徴から、新しい種類と判定した。

このほかにも獣脚類恐竜の卵化石として、世界でも丹波市でしか記録されていない「ニッポノウーリサス・ラモーサス」のほか、「プリズマトウーリサスの一種」を確認している。

篠山層群からは今回発見分を合わせると、これまでに計6種類の恐竜卵殻化石が確認されており、同博物館などは、「骨化石だけでは未知であった篠山層群の多様な恐竜類の存在が明らかになった。さらには、前期白亜紀の地層において、スペイン・テルエル州を超え、世界で最も卵殻化石の種類が豊富な地域であることが判明した」と話している。

村上さんによると、「丹波竜の仲間探し」をテーマに調査していたところ、獣脚類の首の骨の一部の化石を発見。「ここを掘れば何か出るかもしれない」と学者らにアドバイスをしたところ、その場所から数多くの「ヒメウーリサス―」が密集状態で見つかったという。発掘現場は巣の残骸であると考えられるとしている。

村上さんは、「2006年に国内最大級の丹波竜の骨化石と出合い、今度は世界最小の恐竜の卵化石の発見につながった。私の名を学名にまでしてもらい誠に光栄」と喜んでいる。

同博物館(079・559・2001)では6月30日―8月31日まで、今回発見した化石など計8点と、パネルや論文などを展示する。月曜休館。

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