今年に入り、猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症―。緊急事態宣言の発令などをへて、全国各地の感染者数は小康状態になっているものの、東京では再び増加傾向にあり、「第2波」が懸念されている。感染拡大からこれまで、兵庫県丹波篠山市、丹波市の地域社会を維持するために奔走した人々に当時を振り返ってもらい、今後の備えを聞いた。今回は特別養護老人ホーム「山路園」(丹波市山南町)相談員の川上智子さん(48)。
特別養護老人ホーム、ケアハウス、デイサービスなどの対策の要は、持ち込まれないこと。
午後10時15分からの夜勤に入る3時間前、午後7時に検温し、発熱していれば出勤停止。常に発熱の有無を気にする生活だった。春休みやゴールデンウイークは、職員だけでなく、家族も、極力外出を避けて生活した。
送迎車の乗車前、施設に入る前の2度検温をし、デイサービス利用者を迎え、自宅に送り届けた後は毎日、送迎車を消毒した。
通常であれば、病院から新規入所者を迎える際、本人に面会し、顔つなぎをするが、これができなくなった。山路園も外部の人の立ち入りを制限。家族に居室を見てもらうことができなくなった。「本人も不安だろうし、家族にもロビーまでしか入ってもらえず、心苦しかったが、『こんなときだから』と理解してもらえありがたかった」
認定こども園からは登園者を減らす要請があり、小学校は臨時休校。小さな子を持つ職員が休まねばならない日は、事務職員やケアマネジャーらが介護士でなくてもできる業務を手伝い、全職員で乗り切った。
外食、ボランティアや子どもとの交流といった、行事に取り組めなくなり、利用者の笑顔が減った。入所者の家族ら、外部の手を借りることができなくなり、介護士の負担も増えた。それでも「自分たちにできることをと、みんなが工夫し、明るいケアに努めた」。
オンライン面会は導入しなかったが、代わりに始めた、LINEやメールで利用者のようすを家族に伝えるサービスが喜ばれた。これまで、定期的だったり、体調がすぐれないときに連絡していたが、「笑顔を届けられるようになった」。「笑顔の連絡」や、職員の感染予防が習慣付けられたことは収穫だったと感じている。利用者と外部の交流再開を心待ちにしている。