68歳CDデビュー コロナ禍中も「社会元気に明るく」 さびしい幼少期”歌”に支えられ

2020.07.31
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「花咲ゆう」の芸名で、CDデビューを果たした石井さん=2020年7月11日午前10時1分、兵庫県丹波篠山市藤坂で

兵庫県丹波篠山市藤坂の石井さかゑさん(68)がこのほど、「花咲ゆう」の名でCDデビューを果たした。退職後、趣味のカラオケが高じて本格的なレッスンに励み、わずか2年でのリリース。伸びやかな歌声で、どこか哀愁漂う歌謡ポップスを歌う石井さんは、「コロナ禍の中だけれど、歌うことで社会が元気に、明るくなるように活動していきたい」と笑顔で話している。

デビューシングルには、北海道・釧路―根室間の鉄道路線を題材に、愛する人のもとへ向かう情景を描いた「花咲線~あなたに会いに~」と、軽快なリズムで燃える恋を歌う「ラテンのリズムに酔いしれて」を収録。カラオケバージョンもある。

「花咲線―」は、石井さんがレッスンを受ける音楽家・いまいこうじさんが作詞・作曲を手掛けた。

芸名もいまいさんが命名し、デビュー曲から「花咲」を、石井さんの孫の名前から「ゆう」をとった。

昔から歌が好きで、カラオケ店に通って楽しんでいるうち、店の人から「プロのもとでレッスンを受けてみたら」と提案された。

最初のうちは「趣味で歌っているだけなので」と断っていたが、「一度だけなら」とグループレッスンに参加。そこでいまいさんと出会い、「個人レッスンを受けてみないか」と勧められた。

各地のカラオケ大会などには参加したことはあるものの、優勝したこともなく、「まさか、まさかの展開」(石井さん)。2年ほど前から本格的にボイストレーニングを受け、今年4月22日、ファーストシングルをリリースした。

幼いころ、母親を心筋梗塞で亡くした石井さん。一人でも多くの命を救いたいと看護師になり、64歳まで市内の病院に勤務した。

幼少期のさびしく、悔しい思いを秘めながらの生活を支えたのが、「歌」。ジャンルを問わずさまざまな曲を聴き、口ずさみ、気持ちをまぎらわせてきた。結婚し、子どもが生まれてからも、家の中には常に歌があった。

そんな石井さんは、「自分だけの歌を歌えるなんて、なかなかできない経験。『心に残るような歌』と言ってもらえるようにがんばりたい」と意気込み、「今までの自分ではない、違う自分になったよう。先生や周りの方々のご縁のおかげ」と喜んでいる。

CDは定価1182円(税別)。

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