兵庫県丹波篠山市呉服町で竹細工の店「竹の家」を営んでいる職人・外山重樹さん(60)が、かつて観光客向けに市内で販売されていた「竹のデカンショ人形」を再現し、販売を始めた。「この人形が『北海道に行ったら木彫りのクマ』のようになってくれたら」と期待。「早くコロナ禍が終わり、観光客が戻ってくる日を楽しみにしています」と笑顔で話している。
同市伝統の民謡「デカンショ節」に乗せて踊るデカンショ踊り。毎年8月の盆時期には「丹波篠山デカンショ祭」(今年は中止)が開催され、多くの人が踊り明かす。
人形部分は、分厚くて加工が難しい孟宗竹(モウソウチク)を、土台部分には、表面に斑紋が浮かぶ希少な雲紋竹(ウンモンチク)を用いる。人形部分には笹の葉のマークをあしらった浴衣を描いた。
竹のデカンショ人形は、かつて市内の別の竹細工職人が制作し、「丹波篠山に行ってきた」という証しとして土産物店などで販売されていた。
近年は作られていなかったが、「あちこちにあった名物土産がなくなっているのはしのびない」と考えた外山さんが、過去のものを参考にしながら再現した。
難しかったのは人形の手の部分。機械を使うと竹が割れてしまう可能性があるため、ポイント、ポイントに穴をあけては糸のこぎりで少しずつ形作っていく繊細な作業を要した。
竹ひごを編むのではなく、木材のように加工してミニチュアの家や小物入れ、車など、さまざまな作品を制作している外山さん。「雲紋竹は丹波篠山ならではの珍しいもの。斑紋は一つとして同じものがなく、味がある。これは土産にしないともったいない」と言い、「特産の味覚は食べたらなくなってしまうけれど、人形を見るたびに『丹波篠山』に行ってきたんだ、と思い出してもらえたらうれしい」と話している。
高さ約20センチの小サイズが1000円、約30センチの大サイズが2000円。「竹の家」と南新町の猫カフェ「くつろぎ古民家 まめ猫」で販売している。