絶滅危惧種が群落形成 腐生植物「シロシャクジョウ」 菌類から栄養”白い杖”

2020.08.21
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ヒノキの林床に群生する希少植物「シロシャクジョウ」=2020年8月8日午後3時26分、兵庫県丹波市で

希少植物「シロシャクジョウ」(ヒナノシャクジョウ科)が、兵庫県丹波市のヒノキの林床で確認された。同県内では丹波市内でしか見つかっていない珍種で、今回で10カ所近くを数える。約5000平方メートルの山腹全域にわたって、あちらこちらに群落を形成している。調査にあたった県立人と自然の博物館(同県三田市)の鈴木武研究員(58)らによると、「丹波市内最大クラスの群生地」という。

同博物館によると、シロシャクジョウ(白錫杖)は、高さ10センチ程度の腐生植物。光合成をせず、共生する菌類から栄養を吸収する特殊な生態を持つ。光合成をしないため緑色の葉はなく、全体に白い。県版レッドリストでは、絶滅の危機にひんし、緊急・厳重な保全対策が必要な種をさすAランクに指定されている。環境省レッドデータブックでも絶滅危惧1類に相当。

2010年8月、「丹波自然友の会」が同市氷上町内で、県内では70年ぶりとなる発見をし、以後、同市内各地で発見が続いている。国内では、本州(近畿)、四国、九州、屋久島、種子島、琉球に分布している。

今回の発見者は、地元の男性(68)。昨年9月、山の見回りをしていた際に発見した。正体不明のまま1年が過ぎ、今年7月中旬、再び同じ場所で「謎の植物」と出くわした。撮影した写真を同博物館へ送り、シロシャクジョウと分かった。

鈴木研究員ら計5人の専門家や学生たちがこのほど、現場で調査を実施。林床から無数に顔を出すシロシャクジョウの旺盛な生育状況を喜び、山腹だけにとどまらず、尾根を越えて分布を広げていることなどを確認した。

鈴木研究員は、「標本数が少なく、まだ生活史がよく分かっていない植物。美しい花を咲かせるわけでなく、小さいので気付かれていないだけかもしれない」と話す。

男性は、「ここまで大規模な群落を隠し通すことは難しい。公開して多くの目で監視・保護していくのも手段の一つかもしれない」と話している。

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