兵庫県丹波篠山市にある曹洞宗・長楽寺(安達瑞樹住職)の護持会の役員が中心となって特産の「丹波篠山黒枝豆」を栽培し、今年度初めて、インターネットを使ったオンライン販売に取り組んでいる。収益を檀信徒の研修会や寺の維持管理費に充てようと企画したもので、役員らは、「農業を通して寺を支えたい。若者を中心に“寺離れ”が進む中、これからもこの寺があり続けること、そして、楽しいことをやっている護持会として、いろんな世代の人に知ってもらえたら」とほほ笑んでいる。
檀家数は約50軒と決して大きくはないが、かやぶきの上に張った「安全屋根」は数年に一度塗り替えなければならないなど、継続した維持管理費が必要で、護持会の会費や寄付、寺の会計などから捻出している。
そんな中、寺の目の前にある畑が使われなくなったことを知った役員ら。みな農家で、「なんか作ろか」と声が上がり、「護持会農業委員会」を結成して黒大豆を栽培することに。さらに「黒枝豆を売って、少しでも寺のために使おう」と、農業を通して菩提寺を支える取り組みを企画した。
護持会は毎年、研修旅行に出かけるなどしており、それにも売り上げの一部を充て、より檀信徒同士の親睦を深める場をつくることにも活用したい考え。
収穫シーズンを迎え、2キロセット3500円、3キロセット4600円(いずれも税、送料込み)を用意。「禅寺特別セット」として販売し、安達住職(46)によるゆで方説明書や食事にまつわる法話、オリジナルうちわも付ける。
護持会の伊熊弘行さん(80)は、「我々は先が短いから心配しても仕方ないけれど」と苦笑しつつ、「寺の維持はもちろん、若い世代の寺離れを食い止めたい。今回の取り組みが長楽寺を知ってもらうきっかけになればうれしい」とほほ笑む。
安達住職は、「寺と一緒になって活動してもらえる非常にありがたい取り組み」と言い、「曹洞宗は全国に1万カ寺以上ある。このネットワークを活用し、黒豆のほかにも、いろんな作物の販路を広げたい。支えてもらうだけでなく、檀家のみなさんの力になれたら」と話している。
長楽寺護持会農業委員会の特設ホームページのほか、同市の味覚の祭典「丹波篠山味まつり」が新型コロナウイルスの影響で中止となったことを受けて市が開設したポータルサイト「味まつりオンライン」などで販売している。