激戦地の陸軍鉄兜を寄贈へ 元日本兵がミンダナオで収集 「戦争の悲惨さを後世に」

2020.10.20
ニュース丹波市地域地域歴史

長年遺族会で保管していた鉄兜を鶉野飛行場資料館に寄贈する里支部長(左)と会計の芦田さん=2020年10月15日午後零時22分、兵庫県丹波市氷上町石生で

兵庫県丹波市遺族会氷上支部(里尚支部長)がこのほど、太平洋戦争末期の旧海軍飛行場跡にある鶉野飛行場資料館(同県加西市)に、フィリピン・ミンダナオ島の激戦地で収集された鉄兜などを寄贈する。同資料館で活用してもらい、戦争を後世に伝えるのに役立ててもらえることを願っている。

鉄兜は、故・中川美代司さん(丹波市氷上町)が、1973年(昭和48)に当時の氷上町遺族会に寄贈したもの。中川さんは、44年(昭和19)5月、歩兵74連隊(豹第12024部隊)で同島に上陸。米軍と交戦し、飢えとマラリヤで多くの戦友を亡くした同島などで、戦後、政府派遣遺骨収集団の一員として、遺骨収集に携わった。鉄兜はその際に持ち帰ったもの。全体が錆びており、持ち主の名前はどこにも見当たらない。

遺骨収集にフィリピンを訪れた中川さん(中川氏の著書より)

歴代の町遺族会長が自宅で預かっていたが、里さんが氷上支部長(丹波市発足後、支部に)になった2011年に事務局の市に預け、以来、市役所で保管してもらっていた。ただ保管を続けるより、どこかで役立ててもらった方が良いと考え、中川さんの家族の了承を得て、寄付することにした。

鉄兜と、中川さんが戦後50年の95年(平成7)に出版した従軍記「境界なき生と死 嗚呼、堀田大隊」も寄贈する。生前、中川さんから同書を贈られた、遺族会会計の芦田淳一さん(68)が提供した。

里支部長(79)は、「おそらく遺骨の近くで収集されたものだろう。貴重なものだが、遺族会会員も高齢化し、保管が難しくなった。戦争の悲惨さを後世に留めたく、戦後75年の節目に寄贈する」と話している。

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