人口減少に伴う医療需要の減少と市外への患者流出で赤字が続いている兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センターと医療法人社団「紀洋会」の岡本病院が、国からの支援を最大限受けることをねらい、市に2病院の経営を統合して、既存2病院を市立病院化するなどの計画案を提示した。両病院は、「あくまで一つの案だが、このままでは両病院共に成り立たない。将来の地域医療をどうしていくかという議論を一緒に進めていきたい」とした。一方、酒井隆明市長は、「県内の公立病院も赤字となる中、丹波篠山の財政では簡単にはいかない。国や県、市民の意見も聞きながら慎重に検討を進めたい」とした。
両病院が市に医療体制を維持するための議論を行う場を設けることを要望し、市民代表も交えて13日に初めて開かれた「地域医療関係者会議」で計画案が示された。
案は2つ。市が100%出資して設立する「地方独立行政法人」か、市が開設者となり、管理を委託する「指定管理者制度」。共にメリットとして地方交付税が得られることや効率的な事業運営、事業の透明性の確保などを挙げた。デメリットとしては、2病院の職員の処遇の調整が課題となることなどを挙げた。
独立行政法人の場合は、紀洋会の職員は新法人の職員になり、同医大篠山キャンパスの職員は新法人に出向。指定管理者の場合は、両職員共に指定管理者所属となる案を示した。
現状、市は医療センターに年1億2600万円の運営補助金を支出。また救急搬送の受け入れで、実績に応じて同センターに年5000万円、紀洋会に年2500万円を支出している。
しかし補助金を受けても、同センターは毎年赤字、紀洋会は介護部門も含めた全体では黒字となっているものの、医療部門は長年、赤字が続いている。両病院は診療科目や介護分野などで共通している事業も多く、「限られた患者や利用者を取り合っている状況」(病院関係者)という。
同センターの内藤泰事務部長は、「提案した方法はあくまで『このようなやり方もある』という案。毎年赤字を出しながらも学校法人が負担して何とかしているが、今後も続けられるか分からない」とし、「決して医大が撤退するというニュアンスではない。効率的に、国、県の支援を最大限受けられるようにしていけば、継続して市民にもサービスを提供できる。何とかこの地域でいいものをつくっていかないといけない」とした。
岡本病院の中村雅和事務長は、「民間である以上、赤字を続けることはできないが、自分の収益構造だけを考えて方向転換することはしない」とし、「5年、10年先の丹波篠山の医療を整備するために両病院の事業を整理していかないといけないが、民間同士では整理が難しく、市が間に入ってかじ取りをしてもらわないと進まない。将来の市民の健康を守るために市はどのように考え、医療に何を求めるか。共にあるべき道を考えていきたい」と話した。
酒井市長は、「両病院とも市民のためにがんばっていただいている。今の形で続いていくことは難しいと思うが、他地域の運営の状況を見ても公立病院はたやすいものではない。提案を受けた以上、どのようにすればいいか、市民をあげて何とか良い方法を検討していきたい」とした。
両病院は今春、医療・介護分野での連携協定を締結している。
次回の関係者会議は12月に開かれる予定。