兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センターと、医療法人社団・紀洋会が運営する岡本病院を市立病院化し、経営面で統合するという両病院からの提案について議論する「市地域医療関係者会議」の2回目の会合がこのほど開かれた。ともに地域の中核的な病院ながら赤字が続いている状態。両病院は、国からの交付税増額で黒字化できるとの見込みから改めて統合の必要性を訴え、市が懸念する財政負担の増加について医大側は、「実質的にはない」と主張。一方の市は、「5年、10年先を考えたときに本当にリスクはないのか」とし、より詳細な財政シミュレーションを行いながら、慎重に議論を進めていく姿勢を示した。
両病院の考えは、2病院を市立病院にすることで交付税が増えることを見込み、現状の赤字経営の脱却を狙うもの。運営は両者が入った新法人が担い、「公設民営」を描く。
医大側が今会合で提示した収支予測では、現状、2病院合わせて年間約2億円の赤字となっているが、交付税の増額によって約1億4000万円の黒字になるとする。
市は運営補助金として医大に年間9000万円(特別交付税繰入分の3600万円を除く)と救急補助金として約5000万円を、岡本病院には救急補助金で約3000万円を支出しており、医大側は、現行以上に補助の増額がなくとも、公立化による交付税の増額分で黒字化できるとした。
公立化で一体的に運用することで、両病院や市の診療所でカルテを共有できることや、専門性の高い治療については医大本院の支援を受けることもメリットとして掲げた。
新型コロナウイルスに対応するため、通常の診療に影響を出さず、安心して診療できる「地域包括急病センター」を市が建設し、医療センターに運営を委託しながら、岡本病院や市医師会と協力して運営することも、喫緊の課題として提案した。
ささやま医療センターの片山覚院長は、「この20年間の累計で医大本体から50億円、市からも50億円(施設整備費など含む)を入れてもらって何とか維持しているが、それでも赤字。市と医大で負担してきたところに国も入れて3分担しようとするもの。市にとって今よりプラスになることは間違いない」とし、「新型コロナの影響で医療需要が大きく減少しており、急いで対応することが必要」とした。公立化後の医師派遣については、「公立になれば医大が手を引くという話ではない。大学のバックアップは必ずする」と明言した。
岡本病院の中村雅和事務長も、「このままでは持たない」とし、「赤字科目をなくし、療養病棟だけにすれば病院としては残れるが、それは地域の医療機関として正しくないとも思っているから悩んでいる。医大とどうすみ分けるかのポイントとして公設民営も一つの手法」とした。
酒井隆明市長は、(1)求められる診療科目は何か(2)交付税算入だけで考えず、まずは経営改善の方策を(3)統合策の研究(4)他の市立病院の経営状況の調査と市の財政シミュレーション―を議論していくことを提案。「コロナ対応については早急に市ができることを検討したいが、統合は別問題。厳しい状況になっていることは理解できるが、『大丈夫か』という気持ちもある。提案は一つひとつ真摯に受け止め、検討を進めたい」とした。
委員からは、「市民としては、丹波篠山よりも財政がしっかりしたまちでも市立病院は赤字。それが本当に丹波篠山でできるのか」「このままでは共倒れは現実的。コロナのためにそれが早まる可能性もある」などの声があった。
次回会合の日程は未定。