普段なら都市部などに出た家族の帰省を迎えることが多い兵庫県丹波地域(丹波市、丹波篠山市)。ただ、今年は新型コロナ禍中。帰省は少ないとみられるが、あるとすれば注意すべき点は何か。感染症専門医の見坂恒明医師(45)=同県立丹波医療センター地域医療教育センター長=に聞いた。感染流行地域から帰省する人を迎える家族は、「海外から帰国者を迎えるつもりで」と注意喚起している。
―人が動く年末年始の懸念は
感染流行地域から帰省する人がウイルスを持ち込み、家庭内感染が広がらないかと心配している。帰省は「GoToトラベル」と同じ。観光地のホテルなどと比べ、家庭は感染対策がしづらいし、家族はしゃべり込むので、帰省した家族の中にウイルスを持った人がいた場合、感染リスクが旅先以上に高くなる。「家族だからウイルスを持っていない」ということはない。そのことを頭に置いていてほしい。普段一緒に住んでいる人以外の人を迎えるということは、感染流行地域に出掛け、知らない人としゃべるのとリスクは一緒だ。
―危ないタイミングは
マスクを外すときだ。居間や台所で食卓を囲む一番の楽しみの時間が残念ながら危ない。できるなら、食事時間を変える、対面で座らないようにするなどの工夫を。食事中は会話を控え、食べることに集中する。
―なかなか難しい
食事中、口元をクリアファイルでも扇子でも何でもいいので隠す。手のひらでは面積が小さ過ぎる。
―室内でもマスクをした方が良いのか
そうだ。マスクをしないのなら、2メートル以上距離を取る。マスクは不織布のものを。布マスクやウレタンマスクより、ウイルスカットの性能が高いことが分かっている。ウイルスの暴露が少なければ少ないほど感染が抑えられる。特に年末年始は、不織布マスクを使ってほしい。
―帰省する人が気を付けることは
移動中は極力、物を触らない。携帯用のアルコールを持ち歩く。家に入るとまず手洗い、うがいをする。ベストは日帰り。寂しいけれど、団らんから自ら「遠ざかる」。
―つまらない帰省になってしまう
こんなことを言わざるを得ないのは心苦しい。しかし、まだ治療薬がない。いろんな薬が試されたが、有効な薬は「デカドロン」という重症感染症患者に使うステロイドぐらいしかない。肺炎の炎症を抑え、肺が線維化して働かなくなるのを防ぐ薬で、インフルエンザの治療薬「タミフル」のようにウイルスを減らす作用はない。ほかにできるのは酸素投与だ。結局のところ、かかった人が重症化「する」「しない」、回復「する」「しない」は、本人の免疫力次第。我々は回復を助けることしかできず、根本的治療ができない。収束のめどは立たないばかりか、これまでさほど感染が広がっていない丹波地域で拡大することを心配している。用心してほしい。
―単身赴任されているが、ご自身の帰省は
家族が感染流行地域に住んでいるわけではないが、正直、悩んでいる。移動自体にリスクがある。丹波市内で飲みに出ないだけでなく、外食も控えている。研修医たちと院外でコミュニケーションをとり、医学以外の部分も含め、いろんな話をしたいが、それができない。楽しみを我慢して生活しているのは、みなさんと同じだ。