音楽で防災を「文化」に 異色ユニットがメジャーデビュー 神戸発「Bloom Works」

2021.02.09
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メジャーデビューが決まった「Bloom Works 」

シンガーソングライターの石田裕之さんと、ボイスパーカッションの第一人者・KAZZさんによる神戸発のユニット「Bloom Works(ブルームワークス)」(以下、BW)が、大手レコード会社「ワーナーミュージック・ジャパン」からメジャーデビューする。共にアーティストと防災士という2つの顔を持ち、「防災」と「音楽」を組み合わせた楽曲を届ける異色かつ唯一無二のユニット。東日本大震災の発生から丸10年を前にしたタイミングでのメジャーデビューで、2人の共通目標である「音楽を通して防災を『文化』にする」活動を飛躍させる。

2月19日、同社から配信限定でリリースする楽曲は、「Bloomin’~笑顔の花咲いた~」。誰もが口ずさめる歌詞と、優しく力強いメロディーの中に、災害時の対応と命、笑顔、助け合いの大切さを織り交ぜる。今後、2人の思いと防災をテーマにしたアニメも配信する。

曲のコンセプトにあるのは、約22万人の死者を出したインドネシア・スマトラ沖地震で、震源地近くにもかかわらず、犠牲者はわずか7人というシムル島で歌い継がれている伝説の歌「スモン」。歌の中には、津波が来たら高台に逃げるというメッセージが内包されており、歌が防災文化として根付いている。

BWはシムル島を訪れてスモンを聞いた経験もあり、KAZZさんは、「新曲はスモンを自分たちなりに解釈したもの。今後100年たっても歌える歌をイメージした」と言い、「阪神も東日本も10年というのは『復興』から『伝承』へとつながるタイミング。未来への種まきという意味も込めたリリース」と話す。

BWの楽曲は、メロディーだけとらえれば乗りがよく、聞きやすいポップスだが、スモンと同様、歌詞の中に「防災」の要素や社会への警鐘が存在する。災害伝言ダイヤルを周知する楽曲「171」。フェイクニュースやデマ拡散の危険性を訴える「FAKE」―。身構えてしまいがちな防災というテーマを、つやのある歌声と鮮やかなボイスパーカッションで伝える。

KAZZさんは、阪神・淡路大震災で被災し、神戸市長田区の自宅が全壊したが、奇跡的に難を逃れた。結成していたアカペラグループでボランティアとして歌い始め、人を喜ばせることができる歌の力に感動。「Baby Boo」「Permanent Fish」などプロのアカペラグループで活動した。

近い将来、南海トラフ地震が発生すると言われていることから兵庫県立大学大学院の減災復興政策研究科に入学。防災士の資格も取得している。

石田さんの神戸市北区の実家は阪神・淡路大震災時、あまり被害は受けなかったものの、中学校の生徒会活動で避難所を訪問したり、街頭募金をしたりした経験がある。

シンガーソングライターとして地元で活動すると決めた際、地元に愛着を持つきっかけになったのが震災だと感じ、初リリース曲の収益を神戸ルミナリエの運営に寄付。東日本大震災時には現地に入って復旧支援活動を行ったほか、ボランティアセンターなどを介してギターを抱えて避難所を訪れ、被災者を元気づける活動に取り組んできた。

震災がきっかけになり、防災と音楽に取り組んできた2人が出会い、2018年にBWを結成。防災音楽フェス「BGMスクエア」を開いて2000人を動員したり、学校などでの講演活動に力を注いだりし、防災意識の向上に取り組んでいる。結成当初から、メジャーデビューを目標に掲げており、ついに念願をかなえる。

KAZZさんは、「音楽と防災の活動が認められたことがとてもうれしい。期待に応えたい」と言い、「まだまだ先のことかもしれないけれど、楽しい音楽を通して防災が身近になれば」とさらなる高みを目指す。

石田さんは、「分不相応で高下駄感は否めないが、それをわきまえた上で、自分たちの音楽を広く伝え、防災や被災地のことを思うきっかけになれば」と話している。

2月20日、3月6日に、JR三宮駅南側の三宮ターミナルビル跡地屋外ホール「ストリートテーブル三ノ宮」で、検温やソーシャルディスタンスなどの感染対策を取りながらのリリース記念ライブを行う。

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