東日本大震災の発生から、きょう11日で10年を迎えた。福島第一原発事故に伴い、放射線量を意識した生活を余儀なくされた現地の子どもたちを兵庫県丹波市に招く「どろんこキャラバン☆たんば」(どろキャラ)。実行委員会は、震災発生の年から毎年夏に保養キャンプを開いており、今年も開く予定だ。線量を気にせず、目いっぱい自然遊びができる企画に、延べ253人が参加。高橋典子代表(62)は、「原発事故は現在進行形で、節目と言うには違和感がある」としつつも、「福島の人とずっと寄り添い続けたい」と話す。
親元を離れ、1週間、丹波市内で過ごす。川遊びや花火、星空観察など、自然を満喫する遊びを楽しむ。
「丹波でできることを探していた」と振り返る高橋さん。11年6月、福島に思いを寄せる有志と共に、チェルノブイリ原発事故の被災者支援に取り組む団体「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」を設立した医師・振津かつみさんを丹波市に招き、講演を聞いたことがヒントになった。
「原発事故の一番の被害者は子どもだと思った」と言い、その月のうちに仲間と「どろキャラ」実行委を立ち上げた。夏休みの受け入れに向け、時間はなかった。自身や仲間を突き動かした思いは、「短時間でもいい。子どもたちに安心な地域で過ごしてほしい」―。ただそれだけだった。
初めての年は34人が丹波市を訪れた。中には避難生活を送る子もいた。多くのボランティアの協力もあって事故なく開催できたが、忘れられない出来事がある。バーベキュー会場の片隅に、刈られた草の山があった。ある男の子に「あの草を触ってもいいの」と尋ねられ、「いいよ」と返すと、草を浴びるように全身にかけたという。
木や土、草など、身の回りにあるものに触れる。その当たり前の行為にも線量を気にせざるを得ない、子どもたちの不自由な暮らしが目に浮かび、思わず胸を締め付けられた。「切なかった。子どもは普通に遊びたいだけ。それを奪う、なんてひどい原発事故だったんだろう」
丹波で過ごす1週間、子どもたちには我慢をしてほしくない。嫌なことがあれば、嫌と言える関係を築けることに気を配った。子どもたちと寝食を共にする「子どもスタッフ」を付け、様子を共有し合った。「保養キャンプは学校じゃない。みんなと同じことをしなくてもいい。嫌な思いをせず、過ごしてほしい」と語る。
震災から10年が経過してもなお、保養キャンプを続ける理由は「10年では解決しないことがあるから」と話す。活動資金が集まりにくくなっており、時間の経過を感じるという。「今も制限下の暮らしがあり、そこに子どもたちもいる。福島で起きたことを知り、キャンプを通じて丹波市民にも伝えていければ」と話している。