ワクチン「個別接種」で臨むまち 医師会長「高齢者の声、転倒などの危険考慮」

2021.04.22
地域

兵庫医大ささやま医療センターで始まったワクチン接種の様子=兵庫県丹波篠山市黒岡で

全国各地で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっている。市町村ではあらかじめ決めた日時に対象者を集め、接種を行う「集団接種」が多いが、兵庫県丹波篠山市は普段から利用している地域のかかりつけ医のもとで接種する「個別接種」が基本。接種は市内21の医療機関が担う。医療従事者に次いで優先する、施設に入所する高齢者や従事者などの接種は5月初旬からスタート。ワクチンが供給され次第、順次、接種対象を広げていく。市医師会の芦田定会長(65)に、個別接種にする意義や、ワクチンのこと、新型コロナウイルス感染拡大についての現状、市民に呼び掛けたいことなどを聞いた。

―丹波篠山が個別接種で臨む理由は

通院されている高齢の人から、「普段からよく知っているかかりつけの先生に打ってほしい」という声があったことが一つ。もう一つは集団接種にした場合、体の不自由な人も会場に来てもらうことになる。市内は高齢者が多い。転倒など事故の危険もあるし、家族などの負担も大きくなる。これらを考慮した。

この体制が成功するかどうかは分からないが、市医師会は誰一人として反対されず、みなさん快く引き受けてくださった。本当に感謝している。

―個別接種にデメリットはあるか

欠点はワクチンの余剰が出る可能性があること。6人という話もあるが、今は基本的にワクチン1瓶を5人単位で接種することになる。そのため、急にキャンセルが出たりして5人の患者が集まらないと余りが出てしまい、期限までに使えないと廃棄することになる。余りなく接種を行うために、医療機関の事務職員が調整することになり、負担もかなり大きくなる。

―感染拡大の現状をどう見る

最近の急激な広がり方は感染力が強いとされる変異株の影響が大きいだろう。また通常、コロナウイルスは冬に流行するもの。今年は春先から感染が拡大しているが、それは、その前に緊急事態宣言があったからだと思う。私の患者でも緊急事態宣言があると風邪の人も減り、GoToキャンペーンをやっていた時期は増えた。年始からの宣言がなければ、もっと爆発的に増えていたと思う。いろいろあるが、国の施策の影響は地方にまで波及すると実感している。

―ほかには

今シーズン、市内のインフルエンザはゼロだった。マスクや3密回避などが効果を発揮している。もしもインフルエンザが例年通り流行していたら、コロナかインフルかで医療現場は大変な混乱になっていた。市民の感染予防の協力があったからこそだ。

逆に言えば、インフルの流行が抑えられているのに新型コロナは収まらない。いかに感染力が強いかを感じてもらえると思う。

―ワクチンの効果はどうみる

ファイザー社が行った臨床試験では有効率が95%と発表されており、非常に高い数値。イギリス型の変異株にも効果があるとされている。

―副反応は

注射した部分の疼痛、発赤、腫脹などの副反応はどんな予防接種でもある。今回のワクチンは、発熱や倦怠感、頭痛、寒気などが他の予防接種に比べてやや多い。ただ、それらの反応は免疫を作るためのもので、ほとんどは2日以内に回復する。

アナフィラキシーショックは血圧低下や呼吸困難などを起こす重い副反応。報告を見ている限り、こちらもやや多いが、症状が出たときの対処は分かっている。また、アナフィラキシーの既往がある場合、かかりつけ医からスタッフの多い病院での接種を紹介するように体制を整えている。

―新型のワクチンに対する不安もある

新しいワクチンだが、急に考えられたものではなく、理論としては以前からあったもの。安全性も高いと言われている。

コロナ自体は世の中からなくなることはないと思うし、いつかは感染する確率が高い。もし感染した場合は重症化することも予想される。もちろん個人の意思が尊重されるが、天秤にかけた場合、私は接種しておいたほうが良いのではないかと思う。

―市民に呼び掛けたいことは

ワクチンを打ったとしても、しばらくはこれまでの感染予防を徹底してほしい。ワクチンによって症状が出ていなかったとしてもウイルスを持っている可能性は否定できず、他人にうつすことがあるからだ。

ワクチンの供給は当初の予定より遅れており、医療従事者でさえ、行き渡っていないのが現状。クーポン券が届いてもすぐに接種できないなど、心配をおかけするが、医療機関の疲弊を防ぐためにも協力してほしい。

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