「農村」学ぶシェアハウス 学生向けに1日500円 特命准教授が開設

2021.05.19
地域

学生や研究者向けのシェアハウスを立ち上げた清水さん(左)と滞在した学生=2021年5月9日午前10時51分、兵庫県丹波篠山市で

神戸大学大学院農学研究科の特命准教授で、同大学丹波篠山フィールドステーション管理者の清水夏樹さん(49)が、兵庫県丹波篠山市内に借りた一軒家を学生や研究者のためのシェアハウス「篠山スタディステイ」として近くオープンする。同市内を訪れる学生は多いものの、神戸から通える距離にあることや費用の問題で日帰りが主流。朝の霧、夜の星、何気ない農村風景など、一日を通した丹波篠山を「ゆっくり、じっくり味わい、より深い学びにつなげるためには、滞在できる場所が必要」と考え、手弁当でハウスを立ち上げる。1日の料金は500円―。

ハウスは2階建てで、1階は共用のリビングや台所、トイレ、風呂と清水さんの居住スペース。1階の1部屋と2階の3部屋を滞在スペースにしており、定員は4人を想定している。

神戸大に限らず、市内をフィールドに活動する大学生や大学院生か、研究者も使える。1日500円のワンコインで、さらに草刈りなどのハウス維持の作業を手伝ってもらうことでポイントが付くようにし、ためたポイントは料金に使えるようにするという。

滞在者向けの個室。今後、必要なものをそろえていくという

食事は、米と冷蔵庫に入っているものは自由に使えるという大盤振る舞い。食べたいものがあれば、持ち込み自由だ。

清水さんはフィールドステーション担当として昨年4月に移住。初めのうちはアパート暮らしをしていたが、「向こう10年は丹波篠山にいる」という覚悟で空き家探しを始めた。

加えて、暮らしの半分を大学、半分を地域で、という「半学半域」の学生や、もっと地域に根付いた活動をしたいと思いながらも経済的にひっ迫している学生や研究者が気軽に利用できるようにと、シェアハウスも兼ねることにした。

仕事として地域の定住促進推進員の会合に出席しながら、ことあるごとに「家を探しています」と伝えたところ、すぐに話がまとまり、今年4月に居を移した。水回りの改修なども地域で知り合った業者に施工してもらうなど、「いろんな人のご縁のおかげ」と笑う。

家の中に現れたゲジゲジや巨大なスズメバチの巣など、田舎暮らしならではの「洗礼」を受けつつ、引っ越し後、すぐにご近所さんがおかずを持って来てくれたり、知らなかったことを教えてもらったりと、地域に溶け込みだしている。

「シェアハウスでもうけようという気は一切なく、料金も光熱水費分という意味。学生だけでなく、研究者もなかなか経済的に余裕がない」と苦笑し、「朝から晩までいないと気が付かない魅力がたくさんある。まずは丹波篠山に気軽に足を運んでもらい、地域で暮らすことで地元のみなさんと一緒に何かする学生が出てきたらうれしいし、ここでの体験が人生の何かになれば」と期待する。また、「私自身、農村の活性化を研究しており、それが本当に役に立つのかを実践する場所にしたい。移住しないと分からない体験がたくさんできている」と笑う。

プレオープンとして数日間滞在した同大学大学院農学研究科の女子大学生(23)は、「暮らしやすくて景色もよく、時間がゆっくりと流れている印象。食べ物もおいしい」と満足げ。「都市部で暮らす学生は一人暮らしが多いし、ご近所さんや地域との関係も希薄。このハウスに滞在することで、人とのコミュニケーションがたくさん学べそう」とほほ笑んでいた。

利用を希望する学生や研究者はフィールドステーションへ。移動には自転車を貸し出す。

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