こんな近くにあるとは… 珍しい「イヌザクラ」ふもとに 「50年以上の観察のたまもの」

2021.05.25
地域

丹波市内で初確認されたイヌザクラの下で記念写真に納まる丹波自然友の会会員=2021年5月15 日午前9時49分、兵庫県丹波市春日町中山で

兵庫県丹波地域では大変珍しいとされる桜の一種「イヌザクラ」が、同県丹波市春日町中山の三尾山の麓で見つかった。自然愛好グループ「丹波自然友の会」が登山道の樹木に名札を取り付けるため、事前調査をしていた際に発見した。同地域での確認は、2015年、隣接する丹波篠山市の西ヶ嶽山中に次ぐもので、丹波市内では初確認。

バラ科の落葉高木。国内では山形県、青森県以南に分布する。里周辺で普通に見られるウワミズザクラと近縁で、白い小さな花がロールブラシ状に集まって咲く花の付き方がよく似る。名前の由来には諸説あるが、ウワミズザクラと似ているが異なることから、「似て非なるもの」の「非・否(イナ)」から「イヌ」に転じたという。

根元幹周り3・6メートル、樹高約25メートル。地面から1メートルほどの位置で7本に枝分かれしており、それぞれの枝は勢いよく空へと伸びている。7本の枝のうち、1本は直径15センチほどだが、残りの6本は約40―50センチと立派で、樹勢もすこぶる良好。10日時点で、目にまぶしい新葉を茂らせ、樹冠付近には白い花も見てとれる。

今年4月、同会員5人が、森林生態学を専門とする兵庫県立大学自然・環境科学研究所の藤木大介准教授や同大院生と一緒に、三尾山登山道で樹木札を取りつける木を選定していたところ、駐車場から徒歩約10分、登山道脇にわずか5メートルほど入った渓流が流れる山林内で発見。藤木准教授が「イヌザクラである」と同定した。

県内はもとより、全国的にも自生数は少ないとされ、丹波篠山市西ヶ嶽のイヌザクラは幹周り4・35メートルで県内最大。同市では川原集落でも見つかっており、同約80センチ。これまで県内一の大きさとされてきた神崎郡のイヌザクラは同2・78メートル。国内最大は、東京・調布市の同9・9メートル。

同友の会は1968年発足。丹波市内を中心に月に1回、例会(観察会など)を開き、年に1度、同市内で樹木の名札付け活動を実施している。

同会の梅垣守明代表(67)は、「今回の発見は単なる偶然や幸運によるものではない。発足から半世紀以上にわたる友の会の丁寧な自然観察、調査活動のたまもの」と喜び、「イヌザクラは、丹波の豊かな自然の証し。今後の活動のやりがいにもつながった」とほほ笑んでいる。

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