兵庫県丹波市の養鶏会社「カンナンファーム」(河南一夫会長)が、業者が卵の殻を割る手間が省ける「液卵」の加工場を同社近くに新設した。大量生産される菓子や機内食など、卵を多く使う業者に重宝されるもので、全卵と卵黄、卵白の3種をラインナップ。同社の山口洋史常務(34)によると、同県丹波地域に同様の加工場はないという。自然な風味を生かすため添加物は入れない。生でも販売するが、殺菌後に冷凍保存した商品の場合、賞味期限は1年半ほどに延びる。
養鶏場から300メートルほど離れた河南会長(88)の自宅敷地内に新設。鉄骨平屋建てで、床面積は150平方メートルほど。卵黄と卵白を分ける場合、専用の機械で卵を割り、スリットが入った溝を通過させることで分別する。その後、客からの注文に応じて60度の低温殺菌の工程に移る。
衛生管理を徹底しており、肌の露出を抑えた清潔な服を着た3―4人の社員らが作業に従事。年間100トンの生産を目指している。
同社は、ゆったりとしたスペースのケージで2万5000羽を飼い、トウモロコシや魚粉、大豆粕などを自家配合した餌を与えることで、栄養価が優れたコクのある卵を生産。業者によっては、新型コロナウイルスの影響で人員を削減したり、商品生産に関わる人数を減らしたりしており、殻を割る手間が省ける液卵を望む声は多かったという。山口常務は「要望に応えられず、お客が離れてしまったこともあった」と振り返る。
一般販売の予定はないが、小規模の菓子製造業者などには小ロットで対応する。殻は細かく砕き、堆肥にして販売する。山口常務は「丹波産の卵をうたわれるお客さんに、ぜひ液卵を使っていただければ」と話している。