砂漠世界舞台の冒険物語 「ジャンプSQ.」で初連載 「漫画家としてスタートライン」

2021.06.09
地域

出口さんの作品「第9砂漠」1―3巻の単行本

兵庫県丹波篠山市出身の漫画家、出口啓さん(30)が昨年2月から今年5月、月刊漫画雑誌「ジャンプSQ.」(集英社)で作品「第9砂漠」を連載した。1000年前の大戦で砂漠化し、8つに分かれた世界を舞台に、主人公の少年が行方知らずの父を追い、全ての砂漠の起源とされる「第9砂漠」を目指す冒険物語。単行本も3巻出ており、最終巻は6月4日の発売予定。出口さんは「絵の技術や物語の構成などはまだまだ洗練されていない」としつつ、「ようやく漫画家としてスタートラインに立てた。また次の連載を持てるようにこの経験を生かしたい」と気持ちを新たにしている。

「第9砂漠」は自身初の連載作品。「出口景」という漫画家名義で描いた。

水で出来た獣「聖霊水(ヒュドラ)」が生息する「第1砂漠」で暮らす主人公の少年「マオ」は、聖霊水を狩り、生活水を得る狩人。行方知らずになっている父の遺物に残されていたメッセージを頼りに、「第9砂漠」を目指して旅に出る。遭難していた少女「カナリア」ら仲間と共に「第2砂漠」「第3砂漠」といった各世界を回り、困難を乗り越えていくストーリー。

出口さんは「冒険心を持って野山を駆け回っていた小学生のころの自分と、『外の世界』への憧れを持って上京した自分に、主人公を重ね合わせていたのかも」と話す。

2018年、季刊漫画雑誌「ジャンプSQ.RISE  2018 SPRING」に、読み切り作品「おいしい水の殺しかた」を掲載。読者アンケートでの評判は上々で、読み切り作品からストーリーを広げた「第9砂漠」の連載が決まった。

幼いころから「両親の影響で漫画が好きだった」という出口さん。実家には「週刊少年ジャンプ」や「ブラックジャック」などの雑誌や漫画がずらりと並んでいたという。中学時代に、ぼんやりと「漫画家になりたい」という夢を抱いた。地元の高校を卒業後、宝塚造形芸術大(現・宝塚大)に進学。漫画制作について学ぶ専門コースで技術を身につけた。

大学卒業後に上京し、10人ほどの漫画家のアシスタントについてきた。サポート作業をこなしながら、自身も作品を描き、完成した作品は出版社に持ち込んだ。「連載を持てないうちは漫画家じゃないと思っていた」

連載を振り返り、「漫画を描くか、寝るか、食べるかしかない1年だった。締め切り直前は毎月、吐きそうになっていましたね」と苦笑い。それでも「『面白かった』『分かりやすかった』と読者からの声が定期的に届くのがうれしかった」と話す。「自分の伝えたかったことは伝えきれたので満足。やり切りました」と充実感をにじませた。

今後に向け、「書きたい話もたまってきている。次の連載を決めて、猫を飼うのが目標です」と笑っていた。

関連記事