兵庫県丹波市にある氷上西高校2年の授業「探究II」のグループの一つ、「水族館班」のメンバー(9人)は、「博学連携」の取り組みとして、市立青垣いきものふれあいの里の協力を受けながら、水族館づくりを進めている。今秋に校内でお披露目することを目指し、同校周辺の川に生息する淡水魚や水生昆虫を採集。5―6台の水槽で展示する予定。
「探究II」は、地域を盛り上げ、「丹波ファン」を増やすことなどを目的に、生徒自らが立案、地域の人や団体への協力要請、実施までを行う授業。テーマごとの7つの班があり、水族館班は2年生9人で構成する。
いきものふれあいの里には、大きな水槽で淡水魚を飼育展示しているコーナーがあることから協力を要請。以前から博学連携を重要視していた同施設も協力を快諾した。
昨年6月から両者が顔を合わせて、どのような内容の水族館にするのかなどを数回にわたって打ち合わせ、具現化を進めてきた。
このほど、メンバー5人が同施設を訪れ、施設職員と一緒に同町西芦田を流れる遠阪川で、水族館に展示するための生きものの採集に励んだ。
たも網を川岸の茂みに突っ込むなどして、ドンコやカワヨシノボリなどの魚や、さまざまなトンボの幼虫ヤゴなどを次々に捕らえていた。
秋の校内展示に先駆け、5日から同施設で始まった「淡水魚と水辺のいきもの展」に、氷上西高コーナーを設けている。水生昆虫をたらいに入れ、“触れる展示”を行っているほか、アメリカザリガニ釣りなどのアトラクションもある。
班長の生徒は、「地域や、市外の人にも楽しんでもらえる水族館に仕上げ、丹波の豊かな自然を知ってもらいたい。取り組みを通じて、僕たちも地域の自然の素晴らしさの再発見や命の大切さ、人との関わりの大切さを学んでいけたら」と話している。
水族館班の生徒たちはこの日、さまざまな支援のお返しにと、同施設の裏山に希少植物「ヒメヘビイチゴ」の苗を植える作業を手伝った。
ヒメヘビイチゴは2017年5月、県植物研究会のメンバーが、青垣町内で発見。県内での確認はわずか3カ所という希少種で、県版レッドデータブックにもAランクとして記載されている。
発見当初、普通のヘビイチゴに混じって生育していたが、その後、豪雨による土砂崩れや昨夏の日照りで、自生地が消滅の危機にさらされた。そこで、県森林動物研究センターの主任研究員、藤木大介さん(46)が昨秋、ヒメヘビイチゴの種を採取し、発芽させて育苗していた。
生徒たちは苗を手に、藤木さんや同施設職員に連れられ、山中へと分け入った。涼しくて湿った場所を好む植物のため、沢沿いの木陰に8株植えた。
藤木さんは、「生息分布の中心は中部地方から北で、冷涼な土地を好むため、近年の丹波の夏の暑さが心配。うまく根付いてくれればよいのだが。経過観察をしていきたい」と話している。
ヤマビルにおびえながらも丁寧に植え付けていた生徒は、「思っていたよりも小さくて、あまり目立たない植物だが、大変な希少植物。僕たちが植えたこの場所からどんどん生息域が拡大していってくれたら」と願っていた。