子思う親心は万国共通 「コロナで帰れない」親戚のイタリア人 実家に日本感じる作品届ける

2021.07.10
地域

イタリアへ送る木目込みパッチワーク作品を前に記念写真に納まる宏美さんと利雄さん(右側)、ミルコさんと真紀さん=2021年7月3日午後2時47分、兵庫県丹波市氷上町西中で

左半身不随、高次脳機能障害を抱える兵庫県丹波市の植野宏美さん(54)が作る「木目込みパッチワーク」作品が近く、海を渡り、イタリア北東部のエミリア・ロマーニャ州の家庭へと届けられる。送り先は、大阪で暮らす親戚のイタリア人、ゴヴォーニ・ミルコさん(34)の両親宅。コロナ禍でミルコさんが帰国できないため、子を思う親心を察し、少しでも日本を近くに感じてもらえればと、宏美さんと夫の利雄さん(59)が提案した。

ミルコさんは、利雄さんの姉の次女・石田真紀さん(33)の夫で、コロナの影響で2年以上、故郷へ帰れないでいる。

宏美さんと利雄さんは、「ミルコは一人っ子。ご両親は私たちと同年齢。日本で暮らすミルコのことをさぞかし心配されているだろう。日本の文化が感じられる木目込み作品をプレゼントしたいが、どうだろう」とミルコさんに提案した。

ミルコさんは、アニメや漫画の影響で、小学生のころから「将来は日本に住む」と公言し、大学では日本文学を専攻するほどの日本通。「木目込みパッチワークは、写真と絵画の間に位置する日本のアート。風景を題材にした作品を前に目を閉じると、その情景が浮かんでくる」と絶賛し、「両親にビデオ電話で木目込みを見せたら、『きれい』『素晴らしい』と喜んでいた。私もすごくうれしい」と、2人の提案に感謝する。

両親へは、数ある作品の中から、内裏びなや合掌造りで知られる岐阜県白川郷の風景、富士山や桜のある風景など、日本らしさが感じられる10点ほどを選んで贈る予定にしている。

宏美さんは5年前、脳出血で倒れ、一命は取り留めたものの後遺症が残った。そのリハビリのために始めたのが木目込みパッチワーク。もともと手先が器用だったこともあり、すぐに魅力に取りつかれ、作品作りはライフワークになっている。知人から作品の注文が舞い込んだり、作品展を開いたりしている。

「木目込み」は、木で出来た日本人形に、衣服の皺や模様の形に合わせて筋彫りを入れ、その筋彫りに目打ちなどで布の端を押し込んで衣装を着ているように仕立てる伝統技法。これとパッチワークを融合させ、風景や動植物、花鳥風月などをテーマに、さまざまな色や模様の端切れを組み合わせ、額の中で色彩豊かに表現している。

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