警戒レベル下がり「力湧いた」 熱海市からの寄稿 丹波出身の田村さん

2021.07.16
地域

大規模な土砂災害があった静岡県熱海市に住む兵庫県丹波市青垣町佐治出身の田村公平さん(67)に、災害についての原稿を寄せてもらった。田村さんは昨年、新型コロナウイルスに感染。田村さんをめぐる心ないうわさが広がったこともあり、感染したことを自ら公表した。熱海市でシニアバンド「ジーバーズ」のバンドリーダーとして活動している田村さんは、医療従事者への感謝を込めた曲を作り、動画共有サイト「ユーチューブ」で流し、話題を集めた。

まずは、皆さんにお願いがあります。急峻な地形の熱海がすべて危険な土地だとは思わないでください。1986年頃から数年続いた伊豆半島群発地震の時も、それ以降も今回のような大規模災害は起きていません。台風、大雨、地震の災害は少ない地域です。今回の大惨事は、一握りの悪質な者たちの行為が発端となって引き起こされたものと思っています。

災害発生後、国交省や自衛隊、海上保安庁、各都府県の警察署や消防署、各市町からの車両やヘルメットの制服姿があちこちに見られ、多くのご支援をいただいていることに胸が熱くなりました。個人的にもたくさんのご心配、お見舞いの電話、メールをいただき、ありがとうございました。

田村公平さん

テレビニュースで流れる前から私は携帯のSNS(交流サイト)で、あの赤いビルに押し寄せる土砂や家屋倒壊の映像を見ていました。心が折れました。自然の甚大な力を思い知らされました。知人の家や、通りなれた道が黒い魔物にのみ込まれていくのを何度も見せられると、心が委縮してゆきました。コロナ感染直後の犯人捜しで犯人にさせられ、家内に感染させてしまったあの時の虚無感や不条理感と同じだと感じました。

あれから時間というものが立ち直らせてくれた今なのに、またもや打ちひしがれました。ところが不思議なもので、天候が幾分回復した7日の夕方、土砂災害警戒レベル5「緊急安全確保」が解除され、レベル3になった時から自分の中に力が湧いてきたのです。不便だった状態が少しずつ緩和され、久しぶりに青空が少し見えた頃、私にもできることがあると思い、復興に貢献していこうと思い至りました。「ジーバーズ」の仲間と力を合わせてできることをするしかない、と。でも、市内はそれどころではないので、市外でのチャリティーコンサートを始めていこうと、知人に声を掛けたところ、災害支援を目的にしているだけあってか、さっそく候補地を探していただき、「こんなに早く」と驚きました。

今後は、より多くの地を回り、より多くの方に喜んでいただきながら、復興支援を続けていくつもりです。まだまだ手探りですが、被害に遭われた方の後方からの力に少しでもなれるよう、また、ご支援いただいた方に感謝が伝えられるよう頑張ります。

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