「チバニアン」認定に尽力
昨年1月、約46億年の地球史に初めて日本の地名が刻まれた。地質時代「チバニアン」の誕生だ。化石花粉から地球環境の変化について調べる花粉学を専門とし、チバニアン申請チームの中心メンバーの一人として尽力した。「日本の地学史に残る快挙」と胸を張る。
チバニアンと認定されたのは77万4000―12万9000年前の地質時代。千葉県市原市田淵の養老川沿いにある地層「千葉セクション」がチバニアンの根拠となった。一見、何の変哲もない地層にみえるが、「最後に地磁気逆転が起きた地層が地上に露出していて、誰でも簡単に見られる。こんな場所は世界でも数カ所しかない」という。
チバニアン申請チームのメンバーになったのは5年前。京都大学大学院生時代、申請競合国だったイタリアと同じ地中海のギリシャでの研究経験があり、日本では珍しい化石花粉の研究員の奥田さんに、申請チーム代表で、茨城大の岡田誠教授から声が掛かった。
千葉セクションで採取された化石花粉のデータの解析作業を主に任せられた。データを精査し、気温変動の歴史を図にまとめた。ほぼ毎日、午後11時ごろまで作業に没頭した。「今思えば急転直下の5年間。一生に一度の経験でした」と振り返る。
「温暖化と花粉は親和性が高い。例えば、ヤシの木の化石が出れば、当時、その場所は暖かかった。サボテンが出れば乾いた場所だったことが分かるんです」
これから力を入れたいのは、千葉セクションの化石花粉データの再分析。「丸1年はかかると思うが、地球温暖化予測の精度向上に役立てたい」。妻と5歳の息子との3人暮らし。51歳。丹波市山南町谷川出身。