木工作家木工指導員 小泉匡さん(丹波市氷上町香良)

2021.04.11
たんばのひと

小泉匡さん

手間掛ける意味伝えたい

宮崎県の音楽ホールに、国産では国内最大のパイプオルガンを設置するプロジェクトから、木工人生をスタートさせた。

神奈川県横浜市出身。もともとクラシック音楽が好きで、「楽器のメカニズムに興味があった」。建築デザインを学ぶ専門学校を出た後、同県のオルガン工房に入社。同工房が、高さ10メートル、幅14メートル、パイプの数4000本以上という巨大オルガン製作に挑み始めたタイミングだった。

全くの素人で飛び込んだ世界。計画から5年という工期のうちの3年ほどに携わり、1993年に完成。「道具の使い方、技術、材料選び、工程などを先輩の姿から盗み、自分で考える。鍛えられました。今になると、その全てに意味があることが分かります」

その後、木工から離れた時期もあったが、一から技術を学び直したいと、福知山高等技術専門学校に入り、2010年に丹波年輪の里(丹波市)の木工指導員に。15年には自身の工房「風箱」を立ち上げ、家具や、熱と水を加えて木を曲げて作る「オーバルボックス」などを創作している。

技術を“盗む”立場から教える立場に。「技術を言葉に変換して伝えることが、とても新鮮であり、日々探究です。いつも真剣勝負」と話す。工房名の「風箱」は、パイプオルガンの重要な構造の一つで、外からは見えない。

「木工を実際にやってみると、職人が手掛けた家具がなぜ高価なのかが分かってもらえる。安さを求めて人の手間が無視されている時代。見えないところで、良い材料を使い、丁寧に手間を掛けることで長く大切に使える。そんなことを伝えていきたい。木工に関心を持ってもらうための種まきです」。49歳。

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