美はそれぞれの感覚
「美はそれぞれの感覚。評価基準はない。美意識、生活の中で磨かれるもの」。縁あって芦田集学校(丹波市青垣町田井縄)で、デッサン教室の講師を務めている。同施設に最近、段ボールや石こう、FRPなどで制作した自身の2017年の大作「王に告ぐ」(340センチ×185センチ)を展示した。赤ん坊に見立てた人形が44体あり、中央に「王」がいる。「王」に王の決定をさせるのは何かを考えさせる社会性を帯びた作品。
群馬県前橋市出身。東京藝大美術学部工芸学科彫金専攻。同大学院修士課程修了。国内外で開いた個展、グループ展は全て招待されたもの。
大学や高校で講師をして定収入を得ながら埼玉県大宮市を拠点に作品制作。2007年にドイツ北東部のメクレンブルグ州の都市ロストックの独日協会が開いた若手作家コンペでグランプリを獲得したのをきっかけに、制作留学に招待され、10年通った。
素材自体に力のある金属を好んで使っていたが、留学中に知り合った芸術家たちが、様々な素材を用いアイデアや内なる思いを「社会的な表現」作品にすることに刺激を受け、金属以外の素材に目を向けるようになった。同時に、単純だったり、奇をてらったりしたアイデア勝負のようで「美しくない」と嫌っていた現代美術に引き寄せられた。「今の現代美術は、必ずしも美しくはない。作品を通して社会の矛盾などを表現するのも現代美術の一部。そこに引かれた」
今春、ルクセンブルグ公国公認の公募展に応募。結果を待っている。来年は、ドイツ制作留学を予定。その前に、初めて自費で個展を開こうと準備を進めている。59歳。