コウノトリが縁でつながった、兵庫県丹波市の井上勉さん(74)と同県丹波篠山市の長尾勝美さん(73)の2人が、丹波の森公苑(丹波市柏原町柏原)で生き物や自然風景などをテーマにしたパステル画と写真約50点を展示する「二人のいきものがたり展」を開いている。2人は「身近にさまざまな生き物がくらしていることに気付き、地域の自然や環境に関心を持っていただけたら」と話し、生き物との触れ合いを、それぞれの視点と感性で表現している。1月10日まで。27、31日、1月1、3日は休館。
造園業を営む井上さんは、8年前から全国の巨木を訪ねることを趣味にしているほどの自然好き。2017年の秋、自宅近くの田んぼにコウノトリが飛来し、1カ月以上滞在。その様子をほぼ毎日カメラに収めるなどして「すっかりハマった」。
コウノトリとは以前から縁があった。二十数年前、同県豊岡市の県立コウノトリの郷公園開設のための造園工事に携わり、以来ファンクラブに入るなど関心を寄せていた。今年3月には、市に要望していた人工巣塔が同市市島町の鴨神社の一角に建ち、営巣してくれる日を夢に見ている。
写真や絵画は、丹波地域などの市展でたびたび入選するほどの腕前の井上さん。同公苑では4年前から毎年同時期に自然をメインにした作品展を開いている。今回は、新年のえと「寅」にちなみ、京都府福知山市を越え天橋立まで白虎を迎えに行くという物語を頭の中で描き、その設定に沿って車を走らせ、道中で出合った金引の滝や天橋立などの風景をはじめ、サル、ネコヤナギなど動植物を描いたパステル画や、大江山の赤鬼の像などを撮影した写真を展示する。また物語とは別に、コウノトリのいきいきとした瞬間、人工巣塔などを写した写真も飾る。
長尾さんは、ニホンザル、コウノトリ、アサギマダラの3種の野生動物を中心とした写真を展示する。柿をむさぼるサルや、ナマズを丸のみしようとするコウノトリ、自宅のフジバカマ畑で乱舞するアサギマダラなど、気持ちがほっこりとするだけでなく、学術的にも貴重な瞬間を捉えた写真を展示する。
コウノトリとの出合いは2014年秋。丹波篠山市内で朝霧の中でたたずむ7羽のコウノトリに心を奪われた。「その瞬間のドキドキが今も忘れられません」。同郷公園に目撃情報や撮影記録などを報告する「コウノトリ野生復帰事業特別協力員」の認定も受けている。現在、県内で6人が活動しているという。
ニホンザルとの付き合いは長い。09年、篠山市役所を退職後、地域に群れで生息していることを知り興味を持った。現在、獣害問題などを扱うNPO法人の会員として行動調査を行っている。
サル調査をしていた17年に「旅する蝶」として知られるアサギマダラと出合い、その美しさと長距離移動をする生態の不思議に魅了された。自宅の畑にフジバカマをたくさん植え、毎年、蜜を吸いにやって来るチョウとの再会を心待ちにし、全国各地のアサギマダラファンとの交流も楽しんでいる。