近所の”名店”の鉄板継承 地元男性が回転焼き屋開業 「古き良き昭和の店に」

2022.02.02
地域

回転焼き屋「つち万」を営む西村さん。継承した鉄板でじっくりと焼き上げる=2022年1月12日午前11時8分、兵庫県丹波篠山市魚屋町で

兵庫県丹波篠山市魚屋町で先月、回転焼き屋「つち万」がオープンした。店を営むのは近くに住む西村万寿雄(ますお)さん(60)。20年ほど前まで近所で営まれており、当時を知る地元住民らが「名店だった」と口をそろえる回転焼き屋「長谷」で使われていた鉄板を継承し、かつて「たばこ屋」と呼ばれ、親しまれていた建物を改装した。西村さんは「幼い頃から通っていた思い出の店。学生たちの放課後のたまり場になっていた」と懐かしみ、「長谷のように、地元の人がふらっと立ち寄れるような、古き良き昭和の店にしたい」と笑う。

50年以上使われていたという年季の入った鉄板に生地を流し込み、20分ほどかけてじっくりと焼き上げる回転焼きは、外はさくっと、中はしっとりとした食感が楽しめる。

あんは西村さんが毎日仕込むこだわりの味。小豆、砂糖、塩の配分を工夫し、甘さ控えめに仕上げた。もともと料理が趣味という西村さんの「気まぐれ」で、カレーや焼き芋のあん、カスタードなどが並ぶ日もある。いずれも1個75円。

「つち万」の外観。誓願寺のすぐ隣にある

誓願寺敷地内のバス停のそばにあり、たばこ、米や野菜、雑誌などが売られていた「たばこ屋」は5年ほど前に“閉店”。西村さんは「たばこを吸うようになってからよく来ていた」といい、こちらも思い出の店という。

英語教諭として福知山成美高校(京都府福知山市)に36年間勤務し、昨年春に退職。「近所の人たちの憩いの場をつくろう」と、「たばこ屋」を改装し、何かしらの店を開業することを思い立った。

どんな店にしようかと考える中、「長谷」の鉄板がまだ残っており、廃棄寸前になっていることを知った。「長谷」を営んでいた男性の妹に鉄板を使わせてもらえないか駆け合い、快諾を得た。しばらく使われていなかったため、地元のプロパンガス会社「篠山ホームガス」(丹波篠山市杉)に依頼し、修理してもらった。

地元住民らによると、「長谷」の回転焼きは「パリパリになる一歩手前の絶妙な焼き加減。甘さ控えめで、お年寄りから子どもまでがおいしく食べられる味だった」という。

西村さんは「対面で売り買いできる店が少なくなっている中やからこそ、『おっちゃん』と何げない会話ができるような懐かしい店にしたい」と意気込んでいる。

西村さんが焼いた回転焼きを味わった奥山貴史さん(53)は「生地がふんわりしていて、甘過ぎひんから、2個、3個といける」と太鼓判を押していた。

専用機械で焼き上げる焼き芋が味わえる日もある。営業時間は午前10時―午後2時(日によって異なる場合あり)。売り切れ次第終了。月・木曜定休。

関連記事