兵庫県丹波篠山市が開設している「丹波篠山暮らし案内所」の2021年度12月までの移住相談実績が、すでに700件を超えて20年度と並び、過去最多を更新することが確実となっている。案内所を介して実際に移住した人も130人超となり、こちらも最多を更新。今なお影響が続くコロナ禍やリモートワークの普及などが引き金となり、都市部の人が地方での暮らしを求める流れができ始めていることがうかがえる。
電話、メール、面談に加えてオンラインを使った面談による相談を実施している案内所。20年度は計735件の相談があり、50世帯124人が移住し、いずれも過去最多だった。21年度は12月時点で相談件数が735件、移住者は51世帯132人となり、20年度の過去最多を更新。20年度の12月時点の相談は556件だった。
また、4―12月の全ての月で前年度の相談実績を上回った。最も多かったのは、6月の105件で、コロナ禍以前の19年度と比較すると3・75倍。8月は86件で19年度比5・73倍となっている。
移住理由は、以前から上がる定年後のセカンドライフや子育てのほか、起業などもある。このほか、「仕事はリモートワークでできるので、都市部の狭いマンションよりも広い家に引っ越したい」「農業や芸術活動がしたい」「実家とそれほど離れておらず、自分の好きな環境がある」などがあった。南海トラフ巨大地震など、将来の大災害に備えて2軒目を購入する人もいるという。
昨年度はあった「コロナ」というキーワードがほぼなく、同案内所は、「コロナ禍が引き金にはなっているけれど、それはもう当たり前になっており、話題に出てこない印象」と話す。
移住前の居住地では京阪神が多いものの、東京や千葉など遠方の人も。またオンライン面談を始めたことで海外からの相談もあり、海外出張に行っていた人が帰国後の居住地として丹波篠山を選ぶケースもあるという。
すでに移住している人の同僚や後輩、芸術家や職人などのファン、観光で訪れたことのある人などが移住したこともあり、交流人口や関係人口が移住に結び付いた例もあった。
相談の年代別では40代が最も多く、50代、30代と続いた。
増加要因について、案内所は、「全国的に地方に目を向け始めた人の分母が増えている。コロナ禍によって人生設計を考え直した人も多いよう。大阪まで電車で1本という交通の利便性も認識され始めてきた」と話す。
また、「案内所の相談員や不動産業、地域の自治会との連携など、相談体制が成熟し始めたことも大きい。相談に来られた方が希望する物件がなかったとしても、関心のあるものや人とつなぎ、何かを持ち帰ってもらうようにしている。今後もさらに体制を充実し、地方への移住先の一つとして選んでもらえたら」と話している。
移住定住を担当する市創造都市課は、「若い人の移住もあり、地元も受け入れる体制ができ、とても喜ばしいこと」としつつ、「リモートワークの普及で都市部までの通勤圏内でなくても構わないという人も出始めたことで、移住先にするエリアが広がっているため、ライバルも増えている。今後も『丹波篠山でないと』と思ってもらえるように発信していくことが重要」と話している。