兵庫県丹波篠山市は、同市へのふるさと納税をさらに推進するため、庁内に「ふるさと納税推進室」を設置した。同市への納税額は近年、年間1億円以上を維持し=グラフ参照、上昇傾向にはあるものの、県内では24位。県内トップで、全国でも十指に入る洲本市の53億円とは大きな差がある。推進室では高額自治体との違いを分析するほか、返礼品やPRの拡充などを行い、いまや地方自治体にとって無視できない収入源となっている制度をさらに活用したい考え。2022年の目標は4億円。
丹波篠山市は事業開始当初の08年は598万円だったが、少しずつ上昇を続け、16年以降は1億円以上を維持。最高は17年の2億3853万円で、匿名者から「市名変更に活用を」と寄せられた1億円が含まれる。
返礼品は黒大豆関連商品や丹波篠山牛、猪肉、地酒など約450件を用意。市内61社が供給している。寄付申し込みは電話のほか、インターネットサイトの「JTBふるさと納税ポータルサイト ふるぽ」「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」「ふるなび」から受け付けている。
近年の上昇傾向について同市は、「全体的にふるさと納税に対する認知度が高まっていることが大きい。取り扱うサイトを増やしたことも一定効果があった」とする。
同市の今年度一般会計予算222億円の約4分の1にあたる納税額を誇る兵庫県洲本市は、淡路牛や洲本温泉利用券などの返礼品が寄付を呼び込んでいる。数百万円の差で県内2位の加西市は家電(アラジン)が人気だ。135億円で全国トップの宮崎県都城市は宮崎牛、133億円で2位の北海道紋別市はホタテやズワイガニなどと、高級な食材が寄付を呼び込んでいる。
一方、丹波篠山市は、洲本市と比べても、人口規模も同程度で、農産品を多く返礼品にしている点などが似ているものの、同じ事業に取り組みながら大きな差が出ている。
そこで市はふるさと納税をてこ入れするため、推進室を設置。ブランド戦略課や財政課の職員4人を兼職とし、現状分析や、さらなる促進策を検討することにした。
酒井隆明市長は、「返礼品を目当てに寄付してもらっても長続きしないのではないかと考えてきたが、ほかの自治体と何十億も違う状況。それだけあれば市民サービスを充実させることができるので、きちんと努力すべきと考えた」とした。
推進室長を務める波部正司・ブランド戦略課長は、「ふるさと納税はそのまちを応援したいという人からの寄付を募るもの。返礼品だけでなく、個性的で魅力的なまちづくりへの応援としても呼び掛けていきたい」と意気込み、「納税額が増えるということは、ブランド戦略がうまくいっているということでもある。他の自治体も参考にしながら取り組みを進める」としている。