兵庫県丹波篠山市黒岡の国重要文化財・春日神社能舞台で9日、「第48回篠山春日能」が開かれた。来場者らは、境内で満開となっている桜が時折、桜吹雪を降らす中、人間国宝の能楽師・大槻文藏さんらの所作によって幽玄の世界に浸っていた。
能「二人静」は、菜摘女が雪の野辺で神事に使う若菜を摘んでいると、女が現れ、「自分の供養をしてもらいたい」と告げる。驚いた菜摘女はこの話を神職に伝え、「信じがたい話だ」と口にした直後、先ほどの女が憑依し、自分を静御前だとほのめかす。神職から「ならば舞ってみせよ」と促され、舞を始めると、同じ姿の静が現れ、影のように寄り添いながら舞う。
静は舞いながら源義経とともに都から吉野に逃れ、ここで別離を言い渡されたことなどを語り、供養を頼んで消えていった。
大槻さんらの所作に会場は息を呑みながら、神妙な面持ちで舞台を見守っていた。