兵庫県丹波篠山市遠方の天然温泉施設「草山温泉 やまもりの湯」が29日、温浴複合施設「湯あみ里山公園 pucapuca commune(ぷかぷかコミューン)」としてリニューアルオープンする。温泉横に、草屋根が特徴的な木造2階建ての円形建物(延べ床面積約190平方メートル、高さ約7メートル)を増設。建物内には地元農家が丹精した農産物の販売所、バーベキューのできる飲食店、パン店、地元住民を講師に迎えた田舎ならではの文化体験ができるイベントスペースなどを設ける。建物の敷地内(約3670平方メートル)では、里山資源の循環を体感できる催しも企画する。施設管理責任者の大谷晃平さん(31)は「里山の魅力を詰め込んだ施設にしたい」と話している。
1階には販売所、パン店、飲食店、シェアキッチンのスペースを設ける。2階は、イベント会場兼休憩スペースとし、山の谷から吹き下りてくる風を心地よく感じられる空間にする。
販売所には、地元農家が丹精して栽培した野菜や特産品などを並べる。施設がある西紀北地区では、源流で育まれた新鮮な野菜が採れる。販路に頭を悩ませる地元農家の6次産業化を支える。
パン店は、山の芋など丹波篠山産食材を生かしたパンが人気で、先月まで同市日置に店舗を構えていたベーカリーカフェ「HIkoOKI(ヒコオキ)」オーナーの児島佳史さんが拠点を移して営む。飲食店では、施設スタッフが地元食材を生かしたメニューを提供。バーベキューができるエリアも設ける。
シェアキッチンには、スチームコンベクションオーブン、真空パック器、煮沸消毒器など、本格的な調理機材を完備。希望者が時間貸しで使えるようにする。
また、在来種を中心に、ヤマザクラ、クヌギ、クリ、ユズ、クロモジなどの木約150本を植樹。5年ほどかけ、緑豊かな「森」を作り上げていく。畑も作り、野菜作りや収穫体験、落葉を生かした腐葉土・堆肥作りなどの実践を通じ、無駄のない里山暮らしについて知ってもらう。
地元住民を講師に招き、しめ縄作りや炭焼きなど、田舎の暮らしぶりが体験できる催しを開催する構想も描く。
やまもりの湯を所有する公益財団法人「大谷教育文化振興財団」(同県西宮市、大谷壽一理事長)が、昨年8月末に工事に着手した。
施設名は、入浴などを意味する「湯浴み(ゆあみ)」と、里山暮らしのさまざまな文化を「編む」を掛け合わせた。「温泉がある土地の恵みを受けながら、新たなものをぷかぷかと生み出していく場に」という思いが込められているという。
晃平さんは「温泉に入るだけでなく、食文化を知り、走り回ったり、寝転がったりして、自然な環境の中で一日中楽しんでほしい」と話し、「この施設での体験を、田舎を好きになってもらうための入り口に」と願っている。