創業200年、技術と感性脈々と
粘りのある良質の「新屋石」が採れる丹波市柏原町大新屋に仕事場を構えて200年。技術と感性は、時代を超えて子や弟子に脈々と受け継がれ、市指定文化財の高灯籠をはじめ、狛犬や仏像など数々の名作を歴代にわたって世に残してきた。60歳で他界した父親で5代目(義雄)の7回忌(1990年)を契機に本名の「昌夫」を改め、6代目を襲名。現在、柏原八幡宮の社標(高さ約4メートル、幅約45センチ)製作を手掛けており、今月24日に竣工式を控えている。「八幡さんの狛犬は初代の弟子、丹波佐吉が1861年に手掛けたもの。160年後、ここでまた歴史に残る大きな仕事をさせてもらえるとは感慨深い」
柏原高校の夜学に通いながら石工としての腕を磨いた。「家業を継ぐのは自然な流れだった。いずれ6代目となる気負いもなかった。ただ、普通に高校生活を送る同級生が週末に遊んでいる姿をうらやましく思えた時期もあった」
5代目は昔気質の職人。「親方としては大変厳しい人で、手取り足取りの指導というのは一切なかった。よく言われるように技術は盗んで覚えた」。その反面、父親としては優しかった。「子どもの頃は、どこへ出掛けるにも『昌夫、昌夫』と連れ出し、かわいがってくれていたことを思い出す」
近年では、柏原駅前の田捨女像や丹波篠山市郡家の長楽寺の山号石などを手掛けた。「石工一筋で200年続いてきたことを誇りに思う。今、娘婿が後を継ぎ、奮闘してくれている。機械加工が主流の現代だが、昔ながらの手仕事の技術はどのような時代になろうとも石工の基礎基本。しっかりと伝えていきたい」。67歳。