先生は南ア代表―。兵庫県丹波篠山市内の小、中学校に勤務するALT(外国語指導助手)で、南アフリカ出身のモリス・ナタリーさん(27)が、27日からドイツ・フランクフルトで開かれる剣道のヨーロッパ選手権に、同国代表として出場する。市内の高城剣道教室に通い、子どもたちに指導もしており、剣道七段の教室長で、市剣道連盟会長の堀毛孝さん(75)は、「日本人よりも日本人の心を持っている」と評価する。モリスさんは、「コロナ禍でなかなか練習できていないけれど、正しい剣道がしたい」と気合を入れている。
モリスさんは、南アフリカのヨハネスブルグ出身。3年前に来日し、市内の小、中学校で英語の学習をサポートしている。
2017、19年のヨーロッパ選手権や18年の世界大会に南アフリカ代表として出場。上位入賞は果たしていないものの、いずれの大会でも剣道の精神を体現する試合を披露したことで、「ファイティングスピリット賞」を贈られている。今回のヨーロッパ選手権もこれまでの戦績などが認められ、代表選手に選ばれた。
幼い頃は、「元気過ぎる子ども」だったと言い、有り余る体力を発散させるために4歳から空手を始めた。高校2年生の時に父と一緒に剣道を始め、いずれの競技でも代表になるなど頭角を現したが、「南アフリカでは剣道をしている人が少ないので」と謙遜する。空手は23歳の時にやめ、今は剣道一本に絞った。
剣道の魅力は、「世界のどこに行っても剣道をしている人たちは良い人ばかり。礼儀作法や真剣勝負など、いつも学ぶことがたくさんある」と話す。
競技を続ける中で日本の文化に興味が湧いた。そして、「自分よりもみんなのことを考えるのは日本人だけ。今の自分をつくってくれたのは日本の空手と剣道。何かの形で日本に恩返しがしたい」と考え、子どもたちに英語を教えようと来日した。
学校で、また剣道教室で子どもたちと触れ合う日々に、「すごく楽しい」とにっこり。丹波篠山での暮らしについては、「自然が豊かで食べ物がおいしい」と言い、「白いご飯が好き。毎日、農家の方々が頑張って作業されている姿を見ているので余計に」とほほ笑む。
ALTとして日本で仕事ができるのは最長で5年間だが、その後も日本で暮らしたいと考えている。「写真に興味があり、ギャラリースペース兼スタジオを構える夢がある。いつか丹波篠山でできたらと思います」と言い、ここを“第二の故郷”にと考えている。
久しぶりのヨーロッパ選手権に挑むモリスさん。堀毛さんの妻、美紀子さん(72)は、「外国の方で南アフリカの代表で、しかも女性。教室の子どもたちにもたくさん刺激を与えてもらっている。プレッシャーになってもいけないけれど、ぜひ頑張ってきてほしい」とエールを送っている。