軽トラック市場のライバルが手を組み、農業活性化へ―。自動車メーカー、ダイハツ工業(兵庫県伊丹市)とスズキ(静岡県浜松市)が、兵庫県丹波篠山市味間奥の茶畑を借り、社員が年間を通して茶作りを体験。農家から茶作りに関する困り事を聞きながら農業ビジネスのヒントを探っている。
2020年からダイハツが同市大山地区で、軽トラに積載可能なドローンによる農薬散布を始めつつ、農家の困り事をアンケート調査した。昨年も農薬散布を行い、同地区で採れた米や黒豆を社内の生協で販売した。
昨夏、両社が参画したトヨタ自動車グループの次世代の軽商用車事業をきっかけに、スズキは、ダイハツの同市での取り組みに社員を派遣した。また、スズキは2019年、農業ベンチャー企業と組み、リモコンで操作できる農業運搬ロボット「モバイルムーバー」を開発した。
昨年10月には、東京都で開催の「国際スマート農業EXPO」に共同出展し、ダイハツは農業用ドローンを、スズキはモバイルムーバーを展示した。
今年はダイハツとスズキの社員が、大山地区で水稲、熊谷集落で黒豆を1反ずつ栽培する。ダイハツがドローンによる農薬散布や肥料散布を行う。茶畑では、山型の機械「可搬型摘採機」の両端を2人で持って刈り取る作業や手摘みを体験。スズキがモバイルムーバーに、狭いうねの間隔に対応したアタッチメントを取り付けて草刈りや肥料散布を実験する。
ダイハツ工業の新規事業戦略室農業活性化グループリーダー、田村明久さんは「今年はなんとか1つでも具体的な成果を形にしたい」、スズキのモビリティサービス部サービス開発グループ、稲垣和崇さんは「農業の課題を聞いて、できるところからアイデアを出せれば」と話していた。