二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの実質排出量ゼロを意味する「カーボンニュートラル」が叫ばれる中、土壌に二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する脱炭素技術を確立しようとする試みが、兵庫県丹波市春日町広瀬の農地で始まった。収穫を目的としない大麦などを育て、その光合成によって大気中の二酸化炭素を土壌に吸収させる仕組みで、さらに緑肥としてすき込むことにより貯留量を上げるというもの。実験を進める一般社団法人「脱炭素事業推進協議会」(笠原暁理事長、本部・同県芦屋市)によると、技術が確立できれば、農閑期や耕作放棄地でできる温暖化対策として期待が持てるという。
同法人は、企業や自治体への脱炭素事業の支援などに取り組む。丹波市の農家、花田匡平さん(41)の農地で実験している。同法人の小林秀幸理事(40)と旧知だった花田さんが、実験の場を提供した。花田さんが農場を管理し、実験に協力している。
60平方メートルほどを10区画に分け、区画ごとに生育条件を変えている。何もしていない区画もあれば、同法人がアメリカから輸入した有機資材を投入した区画も。秋ごろにそれぞれ土を採取し、協力を得ている国立大学農学部が二酸化炭素の貯留量を計測し、土壌貯留に最適な条件を探る。
今回は大麦の株間に黒豆を無農薬栽培しており、数カ月後に倒伏する大麦がマルチの役目を果たし、草抑えとしても活用する。
笠原理事長(50)によると、この土壌貯留技術が確立されれば、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減目標をクリアしたい民間企業などが、排出削減・吸収量を「クレジット」として買い取ってくれることが可能になり、結果的に農家らの副収入を創出できる可能性があるという。
笠原理事長は「農地でできる手軽なSDGs(持続可能な開発目標)。土づくりが未来につながる。こういう手法があることを知ってもらえれば」と話している。