兵庫県立篠山産業高校で今年度から、企業家精神「アントレプレナーシップ」を養う授業が実施されている。2年生の機械工学科、総合ビジネス科の計73人が対象。生徒たちは、アメリカ・シリコンバレー発祥の実践型教育プログラム「ビズワールド」を用い、起業後の会社経営をゲーム形式で体験している。
起業人材の育成などを目指した教育プログラムを中高生に提供する県の事業「ひょうごスタートアップアカデミー」の一環。斎藤元彦知事が掲げた主要公約の一つ。「ビズワールド」の日本代理店「IKIRU合同会社」(神戸市)の創業者や認定講師らが指導する。公立校の授業では全国初の試みという。
今年度は県教育委員会が選定した6校で実施。篠山産業高は、工業、商業、農業という主要産業を学ぶ県内唯一の高校として選ばれた。
同校では会社設立から資金繰り、製造、マーケティング、販売までの流れを体験する「ビズワールドプロ」(約20時間)と、投資と資金管理について学び、金融資産を組み合わせたポートフォリオを作成する「ビズウィズ」(約15時間)という2つのプログラムを実践する。
現在取り組んでいるビズワールドプロでは、6人ほどが1組となり「会社」を設立。商品としてミサンガを製作する。材料の購入のほか、製作手法や色の特許を取得する際などには、授業専用の通貨を支払う。投資や融資を駆使して通貨を増やしていく。家賃や人件費、利子などの算出も行っている。
7月19日の授業では、銀行員が来校。「社員」の生徒たちは融資を受けるべく、商品のプレゼンや利益の見込みなどを説明していた。会社のブランドロゴ、コマーシャル、ウェブサイトの制作にも挑戦していた。
9月21日には、校内でバザーを行う予定。製作したミサンガを販売し、その後、どれだけ利益を生み出せたかを検証する。
前川奈槻さんは「起業に興味はなかったけれど、みんなで協力してやると楽しい」と話した。西垣萌愛さんは「商品をどうやって買ってもらえるかなんて、考えたことがなかった。起業の大変さと、みんなで協力することの楽しさを学べている」と笑顔を見せた。