ハエでイチゴー。兵庫県丹波市クリーンセンターでごみを燃やした際に出る熱から得た電力でハウスを20度程度に冷やし、夏も収穫できる四季なりのイチゴの試験栽培に取り組む若手イチゴ生産者グループ「TEAM TAMBA ICHIGO―ICHIE」(いちごいちえ)」(高見敦洋会長)が、ハチの代わりにハエを花粉媒介昆虫に使う、丹波地域では珍しい栽培を試みている。嫌われ者のハエが、働き手として重宝されている。
「ビーフライ」の商品名で岡山市の業者が開発したヒロズキンバエ。糖尿病で壊死した部分を食べさせる、うじ虫療法に使われる無菌うじ虫の成虫。
ハウスが1アール弱と狭く、ハチを放すと頻回に訪花して花を傷め実がつかなくなるため、業界で新しい農業資材として導入が始まっているハエを使うことにした。
1パック1000匹入りの蛹を羽化させる。成虫の餌は花の蜜で、330本の苗に咲く花にとまり、食事がてら受粉を促す。黒々とハエが飛ぶハウス。「1000匹は多過ぎるけれど、これ以上少ないロットがない。ハエは、頻回に訪花してもハチと違って花粉を集めないので花を傷めないようです」と高見さん。
イチゴのハウス栽培は、害虫駆除の農薬使用が不可欠だが、ハエはハチより耐性が弱く、注意が必要という。また、昆虫の死骸や過剰に熟れたイチゴにたかるため、ハウス内を清潔に保つ必要があるという。
一箱2000―3000円で、寿命は10日。例えば、ミツバチは10アールあたり一箱(8000―1万匹入り)で2万円程度で半年間持つ。ハチの方が低コスト。一方、曇天でも飛ぶ、活動温度が広いなど、ハエが勝る点もある。高見さんは、「ハエは人を刺しませんから」と笑い、「10日生きるはずが何が悪いのか5日くらいで死ぬ。なんとかもう5日生きてほしい」と願っている。
試験ほ場で、来年4月までスズアカネを栽培し、その後別品種を試す予定。