柏原八幡宮(兵庫県丹波市柏原町柏原)で8月28日、本殿の改修工事を前に仮遷座祭が行われた。本殿の檜皮ぶきの屋根のふき替え工事などを行っている間、御神体を仮の社殿に移すための神事で、本殿の3体の御神体は、厳かな儀式にのっとって境内の三重塔に移された。工期は今月から来年8月末まで。
午後7時、境内に氏子委員(大西眞総代)や工事業者ら計約30人が参集。千種正裕宮司(74)と千種太陽禰宜(39)が御神体と向き合い祝詞を奏上。千種宮司が、御神体を納めた木箱を抱え、その四方を氏子委員らが絹垣という白い布で囲んだ。
千種禰宜を先頭に、玉串を手にした参列者たちは、提灯の明かりだけを頼りに御神体の仮の宮となる三重塔へとゆっくり歩みを進めた。移動の際、不敬がないように注意を促す警蹕(けいひつ)の「オーッ」という低くうなるような声を発し、暗闇が支配する境内に響かせた。
本殿には、誉田別命、息長帯比賣命、比賣命の3体の御神体が祭られているため、3往復した。
2024年で創建1000年の節目を迎え、同年に「奉祝祭」という大きな行事を計画しているため、現在、「令和の大修造」と銘打って、老朽化している境内各所の建築物の改修を進めている。2カ月前には摂社「厄除神社」の仮遷座祭を行った。
本殿の檜皮ぶきの屋根は、前回のふき替えから約50年が経過し、一部で雨漏りがするなど傷みが著しい。屋根のふき替え工事のほか、耐震工事、彩色、金具の金めっき再処理、彫刻の部分補修などを行う計画。
同宮は萬寿元年(1024)、京都・石清水八幡宮の丹波柏原別宮として鎮座して以来、「丹波柏原の厄神さん」として信仰を集めている。
本殿(社殿)は過去の戦火で2度焼失しているが、天正13年(1585)、羽柴(豊臣)秀吉によって再建されたものが今に残る。三間社流造の本殿に入母屋造の拝殿を連接した複合社殿で、この建築様式は「権現造」の先駆けとして貴重。昭和25年(1950)に国の重要文化財に指定されている。
本殿の仮遷座祭を終えた千種宮司は、「事故なく改修工事が完了することを祈るばかり。現在、本殿は神様が留守の状態。この期間に、日頃は立ち入りが難しい本殿内を一般公開していきたい」と話していた。