「米を一から育ててみたい」―。食への関心から、丹波市へのIターン者らを中心とする10人ほどが、兵庫県丹波市春日町七日市のほ場で4種類の米を育て、収穫の時期を迎えている。田植えから除草、稲刈り、脱穀、もみすりまで、全て人の手だけで行う無農薬栽培。30歳代の“お母さん”たちが多く、夫や地域住民の手を借りながら体験しており、このほど市内農家から借りた足踏み脱穀機や唐箕による作業に汗を流した。もみすりをした後、食べ比べや餅つきなどを楽しむイベントを開催する。
福岡県出身で、5年前、結婚を機に移住した田島彩央李さん(35)=同町多利=が発起人。自宅などで料理教室を開催したり、加工品を作って「丹波ハレ印」の屋号でイベント出店したりしている。
毎日のように口に入る米が、どのように生産され、自分には作ることができるのかを自問したという田島さん。昨年、市内の知人が作った緑米を使って餅をついたところ、「めっちゃおいしくて」と笑う。
Iターンした知人を中心に声を掛け、共に稲作を体験する仲間を募った。田んぼや道具を貸してくれる人につながったり、果ては苗を提供してくれる人が現れたりして、次第に輪が広がった。
酒米「亀の尾」、古代米「緑米」、コシヒカリ、「旭」の4種。田んぼは7アールほどで、道の駅丹波おばあちゃんの里の裏手。手植えをしたり、手押しの除草機を使ったりしていると、道行く地域住民の関心を引いたようで、栽培の方法を教えてくれたこともあったという。
3日には、脱穀機と唐箕を使った作業に汗を流した。田島さんと共に作業した竹内彩香さん(31)=同町多利=は、「作業を通じ、知り合いができてうれしい」と喜んだ。
田島さんは「小さかった苗が、こんなに大きく育つなんて」と驚き、「いろんな人が関わってくれて作業できたことが何より。農薬を使わない大変さを知ることができた」と話す。「『やらなきゃいけない』だと続かない。楽しみながら体験できる機会にしたかった。来年も挑戦してみたい」と前を向いた。