兵庫県丹波市の氷上高校の外国語指導助手(ALT)として勤務している南アフリカ共和国出身のジョバルド・ヘンリクセンさん(32)=同市春日町、通称・ジョビ=が、同県公立学校教員採用試験に合格し、来年4月から県内の公立高校で英語教員として教壇に立つ。来日した5年あまり前はほとんど日本語ができなかったが、こつこつと学習し、「日本で教員に」という夢を見つけ、周囲の応援も得て合格を手にした。ジョビさんは「国際交流に対する情熱を生徒に見せ、生徒も自分の情熱を見つけられるよう指導できる先生になりたい」と意欲を燃やしている。
ジョビさんは、地方自治体と国とで行っているJETプログラムで、2017年夏に来日し、丹波へ。氷上高校を拠点に、氷上西高校でもALTを務めている。
来日時は、将来の進路ははっきりとしていなかったが、同僚たちの仕事ぶりを見て、教員になることを決めたという。「日本に来て、先生は科目を教えるだけでなく、自分の情熱を生徒に見せたり、親のようにサポートしたりする幅広い仕事だと知った」とジョビさん。兵庫県が、語学教育を充実させ、グローバル人材の育成を目指すため、英語が母語の外国人を対象に、ネイティブ枠の特別選考を2020年度から実施していることを知り、チャレンジを決意した。
初受験した昨年度は、筆記の1次試験で不合格に。「伝えたいことがあっても書けなかった」と“弱点”に気付いたジョビさんは、漢字の勉強に力を入れ、小学校修了程度の漢字検定5級も取得した。
2度目の今年は、1次の筆記試験を通過。2次の英語の模擬授業と個人面接、3次のグループディスカッション面接にも合格し、県内で1人、採用が決まった。模擬授業や面接には、勤務校の上司や同僚らもアドバイスをくれたという。
ジョビさんは、言語に強い関心があり、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語を身に付けていたが、日本語は「ほとんどゼロからのスタート」。ポケットサイズのノートを持ち歩いて語彙を増やし、丹波市国際交流協会の日本語教室でもボランティアと学び、日本語力を伸ばしていった。日本語能力試験の2級に合格してからは、日本語を教える支援者としても協力した。
また、趣味のクライミングや自宅近くの黒井城跡登山を通じてたくさんの友人をつくり、「友だちのおかげで、日本語を勉強する価値があった」と振り返る。
氷上高の足立均校長はジョビさんについて「人懐っこい性格で、誰とでもくったくなく話ができる。自分の意見を通すわけでもなく、うまく人の話を聞き出せる“聞き上手”」と人柄を評価。
また、同市国際交流協会で日本語教室を担当する十倉直子副会長は「来た時はほとんど日本語が話せなかったが、最後は教員採用試験に合格した。素晴らしいと感動している。諦めずにやれば必ず成果は出ると、他の学習者の励みにもなっている」と話し、「日本に残る選択をしてくれたこともすごくうれしい」と喜んでいた。