兵庫県丹波市市島町の作家、西安勇夫さん(69)が、小説「自動車革命―貴婦人のひとりごと3」(東京図書出版)を出版した。長年身を置いた自動車業界を舞台にしたシリーズの6年ぶり3作目。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」、世界各国で開発が進む「空飛ぶクルマ」、カルロス・ゴーン日産自動車元会長の逃亡事件の3つをテーマに、産業スパイの主人公の活躍を絡めて書いた。西安さんは「近年の自動車業界は“ネタ”が多く、書かずにはいられなかった」と話している。
西安さんは毎日、新聞記事をスクラップしており、事実に基づいて創作するスタイル。新聞記事が掲載された日付と内容をまとめた部分も多く、「業界の動向も分かる内容にした」と話す。
「カーボンニュートラルへの道」の章は、産業スパイ・杉岡清がまとめたレポートが、ホンダが2040年に、新車販売のガソリン車をゼロにし、全て電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にすると発表したことにつながった―という筋書き。「空飛ぶ車」の章は、▽電動▽自動(操縦)▽垂直離着陸―の空飛ぶ車について、海外在住のブレーンが杉岡に報告するという形で紹介している。「ゴーンの逃避行」の章は、ハイレックスコーポレーション社のアメリカ法人副社長を務めたこともある西安さんが、ゴーン元会長に「なりきって」、1人称で書いた。
西安さんは、2025年の大阪・関西万博で「空飛ぶクルマ」が導入されるというニュースに心を動かされたと言い、カーボンニュートラルについては、「最初は半信半疑だったが、資料を集めるうちに、この道しかないと確信した」とも。「日本の基幹産業である自動車業界がこれからどう進歩していくのか、興味は尽きない。これからもシリーズを続けたい」と意欲的に話している。
税込み1500円。丹波地域を含む全国の書店、ネット書店で販売中。