国道429号榎峠バイパス事業(トンネル化)が進められている兵庫県丹波市青垣町の事業地内で、近年、生息分布が急激に縮小しているタカの仲間、サシバの繁殖活動が確認された。このため丹波県民局は、工事による騒音などの影響の少ない場所に代替巣を設置し、営巣地を誘導することとし、地元の自治会の住民を対象にこのほど、専門家の指導によるサシバの巣作り体験を行った。
サシバの保護を通じて地域住民が人と自然との共生を考える機会になればと企画し、2―66歳までの住民12人が参加。県立人と自然の博物館の研究員で、猛禽類に詳しい布野隆之さん(46)から講義を受け、生態や生息環境について学んだ。
布野研究員によると、サシバの生息状況はオオタカより危機的という。減少しつつある原因に、「青垣のような豊かな里山は一昔前までは日本の至る所にあったが、過疎化などで山や田んぼなどが管理されなくなり、サシバの餌となるヘビやカエル、トカゲ、昆虫などが減少。それに伴い、サシバも住めなくなった」と、里地里山の荒廃をあげた。
また、サシバと出合うこつとして「特徴的な鳴き声を覚えること」とし、「渡り鳥で、日本には繁殖のため、春から夏にかけて見られる。『ピックイー』とよく通る声で鳴く」と解説した。
代替巣作りでは、三角形に組んだ太い枝を土台に、徐々に細い枝を重ねたり差し込んだりして、なるべく密になるように組み、直径40―50センチの巣を完成させた。巣の中央には、細かい枝で卵が乗る「産座」を作り、卵が転がり落ちないようにくぼみを付けた。
布野研究員によると、サシバの巣には約200本の枝が使われているという。また、研究調査の途上だが、代替巣の利用率は10%以下と低い。しかし、「使うことも事実。地域の自然環境の保全などに認識を深める意味でも大切な取り組み」と話す。
代替巣は2個製作。後日、専門家が作った代替巣と合わせた計3個を、今回、巣が確認された場所から500メートルほど離れたスギの木の地上から約15メートル付近に架けるという。
母親と楽しそうに代替巣作りに励んでいた、尾形燈哉君(3)は、「この巣に鳥さん、来てほしいなあ」と話していた。
自治会長の足立義光さん(64)は、「私たちの生活空間に珍しいタカが生息してくれていたなんて、うれしいこと。工事によって環境は変わってしまうかもしれないが、代替巣によって来年も変わらずくらしてくれたら」と願い、「来年の春は、孫たちと『ピックイー』の声を聞きに行こうと思う」とほほ笑んでいた。