ロシアによる侵攻に苦しみながら、厳寒の季節を迎えているウクライナの人々へ携帯(使い捨て)カイロを届けるために寄付を募り、15万個のカイロを購入した兵庫県丹波篠山市。酒井隆明市長らが東京都港区にあるウクライナ大使館を訪問し、目録を寄贈した。本紙記者も大使館を訪問。市民や全国の人々から寄せられた”暖かな支援”に感謝したインナ・イリナ三等書記官に、寄付への思いとウクライナの現状を聞いた。
―今回の支援について
本当にありがたいこと。皆さんのサポートに感謝したいし、日本全国から寄付してくださっていることが心強い。
―カイロは役に立ちそうか?
ウクライナの都市部には「セントラルヒーティング」(発電所と各家庭をつなげる暖房システム)があるけれど、残念ながらロシアは全土の発電所を狙った。一生懸命、施設を直して頑張っているが、前と同じようには使えない。セントラルヒーティングも少し暖かい程度しか機能していない。今は特に寒い季節なので、カイロはとても喜ばれる。
―ウクライナにカイロはある?
もともとはなかったと思う。私は大学を卒業し、日本で研修をしている時に初めてカイロを知った。両親にもカイロを送ったが、「何だろう?」と言っていたので、「靴下に入れて使って」と伝えた。
―船で運ばれるカイロは、現地でどのようにして配られる?
慈善団体を経由して一番必要とされているところに届けられる。特に激しい攻撃を受けて暖房がない所で、子どもたちやお年寄りに配られるだろう。
―電力の状況は?
停電は毎日で、1日に数時間など限られた時間だけ電気を使うことができ、その間に急いで料理をしたり、洗濯をしたりしている。私の両親は首都キーウのマンションに住んでいるが、16階に住んでいて、エレベーターが使えないため、毎日階段を使っている。仕事のために出勤している70歳の父は本当に大変だと思う。
―ウクライナの現状は?
ウクライナから送られてきた写真を見ても、たくさんの建物が壊されている。特に東部ではインフラの80%が破壊されていて、本当にひどい状況。復興には非常に長い時間とたくさんのお金がかかる。
―人々の心境はどうか
ウクライナ人にとって家族や自分の家は何よりも大切。それらを失い、すごくストレスになっている。
ただ、ウクライナ人は何のために戦っているか分かっている。1度も攻撃をしていないのに攻撃されたのだから、土地や子どもたちを守る勇気を出して戦っている。
戦争が始まってから700万人くらいが国外に避難したが、半分ほどは戻ってきた。みんなウクライナに戻りたいと思っている。
―今回の侵攻についてどう感じている
21世紀なのにこういうことが起きて、信じられないし、許せない。早く侵攻を止めてほしいが、いつ止めるかも分からない。
日本とウクライナは遠い。けれど、いずれもロシアが「お隣さん」で、日本の北方領土とウクライナは、ほとんど同じやり方だ。力を合わせないといけないし、日本もウクライナも領土の統治を取り戻して国民が豊かで幸せな生活ができるよう、祈っている。
―最後にメッセージを
日本の国民レベル、政治レベルでさまざまなサポートがあることに感謝しているし、全世界の人々が支援してくれている。私たちも諦めないで頑張ろうと思う。